にっぽん丸 道東と平泉クルーズ乗船記(2005年8月31日)

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3日目 根室(花咲港) 入港8:45 出港18:00

早朝、エンジン音が低くなったと思い、部屋のカーテンを開けると外は霧が立ち込めています。予定通り根室・花咲港に到着です。根室港はわが国有数の漁港で、オホーツク海に面した根室港地区と根室半島をはさんで太平洋に面している花咲港地区の二つの港からできているそうです。花咲港はサンマの水揚げ日本一でも有名です。

朝食は例によって8時半までに出頭しなくてはならないので、雰囲気に浸る間もなくメインダイニング「瑞穂」で洋食のビュッフェを食べて来ました。

朝食後、双眼鏡を持ってプロムナード・デッキに行くと着岸のためタグボートが本船を押しています。まだピカピカの新しいタグだったので思わず写真に撮りました。
岸壁上には地元観光協会の方たちのテントが立ち並び入港歓迎セレモニーの準備が整うなか、にっぽん丸はしずしずと着岸しました。入港とほぼ同じ時間に地元の水産高校の練習船でしょうか、大勢の見送りをうけ漁業練習船が航海実習に旅立っていきました。また本船は根室に初寄港と言うこともあり、根室市の主催で根室太鼓の演奏ほか歓迎セレモニーがありました。
根室からのオプショナル・ツアーは、オーバーランドツアーと言って知床のウトロ温泉に1泊し、翌日次港である釧路に夕方到着するものから、納沙布岬だけ行ってお昼に戻るものまで5つありましたが、私達はとりあえずそういうのにはもうちょっと年をとったら参加することにして、東京でレンタカーを予約してありました。(年を取っても折角のクルーズ中、わざわざ別料金で陸に宿泊することは多分ないと思いますが)

行き先希望はとりあえず乗船前から調べてあった、日本列島最東端の納沙布岬と日本最東端の駅、東根室駅です。
船からタクシーで15分ほど行って、根室市内のレンタカー事務所でチェックイン。ところが予約してあった「マークU」クラスが、レンタカー屋さんの都合で配車できなくなり、一瞬「ウッ」と思った所「『クラウンマジェスタ』でよろしいでしょうか?もちろん料金は変わりません」と言う夢の様な一言が。という訳で黒塗りのクラウンで出掛けることになりました。まだ数百kmしか走っていない新車でもちろん純正カーナビが付いています。「これはラッキー!」と夫は大喜びでした。
納沙布岬へは根室市内からはカーナビに従って約20km強、太平洋沿いに国道35号線を東に走ります。晴れていればはるか国後島まで見えるそうですが、霧が濃くてやっと目の前の歯舞諸島に属する貝殻島(3.7km先)が見えるのみでした。北緯43度27分07秒、東経145度23分47"秒の地を踏みしめ、ついでに北方領土問題に関する資料が展示してある「望郷の家(+北方館)」でトイレを借りました。
次に目指すのは東根室の駅なので、今度はオホーツク海沿いに国道35号線を使って根室に戻ります。途中、「北方原生花園」と言う75haもある公園があったので立ち寄ろうとした所、写真の様にポニーの群れが入り口及び遊歩道を塞いでいます。他の観光客もなく、夫が馬の群れの中をまたいで行くのを嫌がったのでここはパスしてしまいました。
東根室の駅はカーナビだと最後道がなくなってしまい、地図上は路地みたいに見える場所にひっそりとありました。運行は1日に上下合計11本と寂しい限りです。
この2つを見終えた所で私は目的を達し、まぁあとは好きにドライブしてよと言う感じだったので、夫が観光ガイドを参考にして「ハマナスの大群落が広がる」春国岱しゅんこくたい と「自然の宝庫」風蓮湖ふうれんこに行くことになりました。


右は根室市内交差点の行き先表示ですが、右にロシア語表記があるので思わず撮影してしまいました。

根室から10km強走ると右手に春国岱の表示が。ここは、根室半島の付け根にある汽水湖の風蓮湖の砂洲にあたり、周囲には広大な湿原や森林、砂丘が広がっています。多数の鳥が訪れる名所で、中でも白鳥が有名だそうです。私はこういうネイチャー系はちょっとだけ雰囲気を味わえば十分なのですが、夫がしばらく歩きたそうだったので併設の駐車場に車をとめて、遊歩道が敷設されていたほんの一部を30分程散策しました。入り口のネイチャーセンターは火曜日が休館日らしく閉まっていたのは残念でした。

あまり昼食が遅くなると夜に差し障るため、近くにある「道の駅スワン44ねむろ」へ行きました。ちょうど国道44号が風蓮湖に接する辺りにあり、レストランやトイレ、みやげ物やさんなどの施設があります。ガラス張りのレストランからは水辺が見渡せとても綺麗でした。ここで夫は根室名物として有名な「スカロップ」ならぬ「さんまのスカロップ」に挑戦しました。スカロップはポークカツとデミグラスソースがバターライスの上にのっかっている物ですが、そのポーク部分がサンマというものです。私は冒険せず花咲ガニの「てっぽう汁」を食べました。
最後に花咲灯台に行き、花咲灯台車石等を見ることにしました。道の駅からまず953号を南下しましたが、森の中の樹海ロードというだけあり適度なカーブとアップダウンに「今まで借りたレンタカーの中で一番高い車だ」と夫はご機嫌でした。JRの別当賀駅の所で142号に入り、ついでに落石岬を見物しようかと途中まで車で登りましたが、最後しばらく歩かないと岬には到達出来ないことがわかり断念、花咲灯台を目指しました。1時間弱で花咲灯台に到着、霧の彼方ににっぽん丸が霞んで見えました。
花咲灯台車石はその名の通り、車輪の様な形をした奇岩で溶岩が水中を流れた時にこの形になったとか。(この形、と言っても写真がないので雰囲気が伝わりませんが)

灯台は数分おきに霧笛を鳴らしておりとても風情がありました。

花咲灯台の霧笛 125KB

車を返す時、レンタカー事務所で「もっと客船の乗客にも北海道をドライブしたい人がいるんじゃない?岸壁で申し込み出来る様にしてみたら?」と夫が聞いてみた所、以前郵船の「飛鳥」入港の際に試みたが、不人気ですぐやめたとの事。これから団塊リタイア世代を客船に取り込むには、手軽なレンタカーサービスなどウケるのではないかと思わないでもありませんが。レンタカー屋さんに船まで送ってもらったのが15時頃で、夏の終わりとはいえ、緯度の高いこの辺りではまだ太陽も高く、部屋で着替えて花咲港の周りをジョギングする事にしました。港の周りの船具屋さんや食堂はロシア語の表示も多く、ここが北方領土問題の最先端である事が実感できます。人気のない港の周りを1時間ほど走って船に戻って来ました。

軽くシャワーを浴びた後、16時過ぎに今度は岸壁上で根室市から提供される地元の味覚(焼き秋刀魚、鉄砲汁、地酒(北の勝)を目当てにまた船を降ります。ど〜も、みたいな感じで近寄ると先に来ていた乗客の方が「新しいお客さん来たからサンマ焼いてよ」等と仕切ってくれました。獲れたての旬のサンマを塩だけで炭火焼きします。焼きあがるのも待ち遠しく、脂の焦げるいい匂いが食欲中枢を刺激します。とりあえず何も付けずに食べ始めるとあまりの美味しさに理性のリミッターが吹っ飛びました。呆れる夫を意図的に無視し、写真を撮るのも忘れて何もつけない版2尾、ポン酢版2尾を一気食いしてしまいました。地酒のお代わりまでしてほろ酔い状態に。
1時間弱楽しんだ後船に引き揚げる頃には、すっかりいい気分で使い物にならない状態となってしまいました。相変わらず霧が立ち込め、見上げるとすぐそこのにっぽん丸がこんなに霞んでいます。
ほろ酔い気分が続くまま、混む前にと言うことで大浴場に行きました。大浴場のそばに「ランドリー・ドライルーム」があり入浴前によごれた衣類を洗濯機に放り込んでおきます。お風呂から上がると洗濯が終わっているので、今度はそれを乾燥機に入れて部屋に引き揚げます。タイマーを1時間位にしておくと大体乾くので、後で取りに行き、必要であれば置いてあるアイロンでプレスすることも可能です。2泊位だと洗濯する必要はありませんが、ジョギングして汗をかいたウェアを洗えるのでこの設備はとても重宝しました。加えて「夫のために客船の一室でアイロンをかける私」に酔うこともできます。
船は予定通り18時に根室港を出港しました。日が暮れつつある中、根室の人々に見送られ、霧笛を鳴らしながら微速で防波堤の外に出て行きました。

にっぽん丸の霧笛 240KB
夕食は18時半から20時半までの間、今回は19時までに行く必要があり、舳先でワッチ(見張り)しながらサンマ4尾が多少は消化されるのを待ちましたがやはり無理、若干気持ち悪さの残るなか「瑞穂」に行きました。和食なのでまだ良かったのですが、案の定半分も食べられませんでした。(前菜)きぬかつぎ、姫さざえ、砂肝スモーク
(椀)蛤の潮汁
(造り)かんぱち、雲丹
(焼物)若鮎塩焼き
(煮物)牛肉すき煮 落とし玉子
(向付け)汲み上げ湯葉豆腐
(小鉢)白海老釜揚げおろし
(香の物)こけし漬け、つぼ漬け
(御飯)栗御飯(白御飯もございます)
(デザート)マスカット、三色羊かん

20時半からは4F「ドルフィンホール」で三遊亭 金八の独演会がありました。私は寝転がっていたかったのですが、夫が行こうと言うので消極的に行った所、流石にプロだけあって声も良く通り、落語もなかなか面白いものだなと思いました。

濃霧の中、にっぽん丸は釧路を目指します。8月も今日で終わりです。