太平洋フェリー きそ 名古屋〜苫小牧乗船記(2007年4月28日)

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2日目 仙台(名古屋から420海里) 入港16時30分 出港20時
朝はレストランの準備が出来たという7時半ちょっと前のアナウンスで目が覚めました。眠い目をこすりながら船位をチェックすると、九十九里沖を航行中の様です。窓から遠く九十九里が見えました。レストランは7時半から9時までですが、ほどなくまた満席になったとアナウンスがあったので、しばらく外に出てワッチすることにしました。
晴天の予報だったのですが、どんよりした曇り空で肌寒い感じです。20ノット以上で走っているので風が強いせいかもしれません。双眼鏡の先に犬吠埼灯台、それから銚子ポートタワーを確認することが出来ました。
レストラン「タヒチ」へは8時45頃すべり込みました。ビュッフェスタイルで和食あり、洋食ありとかなりの充実度です。シリアルも外国船のように種類はありませんでしたが、一応用意されていました。牛乳や、ヨーグルトもあり、とてもバランスが良いと思います。前の晩ついつい食べ過ぎてしまったせいかパワー全開モードとはいかず、いきなり和食中心になってしまいました。夫はモリモリと朝から食欲旺盛で、楽しそうに何度もビュッフェ台とテーブルを往復しておりました。

朝食を終えると「マーメイド・カフェ」に置いてあったフェリーの雑誌を借りて二人で読みました。一晩明けすっかりフェリーの旅が気に入ってしまったので、次航は大洗から苫小牧にしようとか、いや敦賀から小樽に行こうと夢が膨らみます。北航もいいけど、大阪から瀬戸内の橋々をくぐって東予に着いてまたすぐ引き帰すフェリーとか、それから東京から北九州か、大阪から志布志まで行くフェリーも楽しそうです。ゆっくり走って寄港を繰り返す客船より、20ノット位出して走り続けるフェリーがついワクワクしてしまうのは二人揃って乗り物好きだからなのでしょう。もちろん客室の快適さやサービスは比べられませんが、今回の「きそ」の客室はなかなかのものだと思いました。

その後しばらくデッキで航路筋の他のフネを楽しみます。
大洗に向かう商船三井フェリーの
さんふらわあ さっぽろ
日立に向かう川崎近海汽船の
ほくれん丸(又は第二ほくれん丸)
日本郵船のフィーダーサービス用
内航コンテナ船
天気は雲が出てきたり霞がかかったりとなかなか安定しませんが、晴れた瞬間は海がキラキラ光ってとても綺麗です。
午後2時頃の福島県沖で、あと20分程で姉妹船「きたかみ」と行き交うとアナウンスがありました。これがこの航海のハイライトということで、6階のデッキにわらわらと乗客が集まって来ます。左舷前方をしばし見つめていると、遠くから名古屋行き「きたかみ」の船影がみるみる近づいて来ます。
20ノット同士でのすれ違いなので、相対速度は70キロ以上となり、その瞬間はあっと言う間です(カメラを構えているとなおさらです)。

カメラに夢中で気が付きませんでしたが、船首が波を大きく掻き分けていて迫力があります。丁度両船が相対する頃、まず「きそ」から汽笛が、そして「きたかみ」から返礼の汽笛が交わされます。

あっと言う間にすれ違い、「きそ」と「きたかみ」はそれぞれ北と南に別れて行きました。定期航路ならではのシーンを堪能することが出来ました。
姉妹船とのすれ違いが終わると3時近くになっていました。朝食をゆっくりたっぷり食べたので昼ごはんは抜きにしたのですが、ビールのつまみに買ったチーズかまぼこなどを少しつまみ、読書をしたり、テレビを見たり、飽きたらまたデッキに出て行き交う船を眺めたり、時間がゆっくりと流れていきます。これぞスローライフです。5階甲板ラウンジではピアノの生演奏がありました。そうこうするうちに本船がやや西に進路を取り仙台港が近づいてきた様です。
むれ飛ぶかもめにエサを放り投げる乗客もありました。 仙台港は、仙石線多賀城駅の東、約3キロに掘削された掘割式の港で、いかにも新産業港という風情です。定刻よりやや早く、16:30頃「きそ」は仙台港の防波堤を越え、そのまま入船、右舷付けで着岸しました。

さて我々もここで一旦スローライフを終了します。と言うのも、船上のカラオケも面白そう、という夫の発案で、21:30から1間半カラオケボックス(船内に2つあり、料金は人数にかかわりなく1時間1,000円)を予約しているのです。下船客の後上陸してジョギングをし、仙台港を写真におさめ、仙台からの乗船客が乗り込む前に大浴場に行き、その後20時の出港スタンバイをしてから夕食をとり、21時半までにカラオケルームに行かなければならないのです。

と言う訳で17時頃夕日の中、仙台港の長いボーディングブリッジを渡って、ジョギングに出かけました。多賀城は平安時代から陸奥の国府の置かれた、古い歴史を持つ町です。仙石線で通った事はありますが町の中は初めてです。港地区の倉庫やら荷物置き場を走り抜け、国道を走って3kmほど行くと仙石線の多賀城駅、さらに500mほど走って市役所の所で折り返し、帰りには偶然発見した、百人一首の「沖の石」と芭蕉の「奥の細道」にも詠まれた「末の松山」を見物して、7km約40分のジョギングを終了しました。
大急ぎで一旦部屋に戻り、まだ明るいうちにトラックがフェリーのランプウェイから出てくる所や、またここで積み込まれる様子を撮影しようと、カメラ片手に再び長いブリッジを渡りターミナルに戻りました。 ボーイング747のフレイターの様な船首のランプウェイから大きなトレーラーが出入りする様は、フェリーならではです。
撮影終了で、今度は仙台港で清掃の終わった一番風呂に飛び込みます。お風呂は乗船時刻の18時半から使用可能ですが、乗り継ぎ客は少ないのかほとんど貸切状態で広々と使うことが出来ました。大きな展望風呂に入ると日本の船って本当にいいものだ、としみじみ思います。窓の外には積み込みを待つトレーラーとちょっと不思議な風景です。ついでにサウナで10分粘って夜のビュッフェに備えます。
さっぱりした後は自動販売機でビールを買い求め、喉に流し込みます。出港30分前のドラが響いたので、すっかり日の暮れたデッキに出ると、ここでの出港は港内で回頭するのでしょうか、タグボートが本船横で待機しています。

ゴールデンウィーク初日なので、マイカーの乗船車両が多いのか、出港時間の20時を過ぎてもまだ車両積み込み作業が終わりません。定刻より20分ほど遅れて離岸し、左舷後方のタグが引っ張ってフネの回頭を補助します。
21時までのレストランに出港スタンバイもそこそこの20時半頃入ると、大方の乗客は食事を済ませ、もうがらがらでした。今日は「ただいま満席」のアナウンスもなかったので仙台からはあまり人が乗らなかったのかもしれません。それでもここでは、最後だからといってビュッフェの皿が残り少なくなる事もなく、適宜ギャレーから追加が出て来てサービスの良さに関心します。「きそ」の船内でのみ売られている特製白ワイン1,500円を注文し、カラオケ開始までゆっくり食事を楽しみました。そしてやはりステーキを中心に食べ過ぎてしまいました。
さて最後はカラオケです。さっきレストランで飲んだボトルワインの飲み残しを持ち込み、2人で1時間半たっぷり楽しみました。船の振動を感じながら熱唱するカラオケは、船好きにはたまらないひとときでした。カラオケルームは23時までなので延長も出来ず、自主的にお開きにして鍵を警備員さんに返却しました。
部屋に11時すぎに戻ると例によって夫は歯も磨かずに轟沈しました。船は一路北を目指します。