11日目 8月24日(火曜日) ニューカッスル・アポン・タイン 入港12時 出港24時
目覚ましをかけなかったのですが、8時半過ぎに目覚めると久しぶりに朝から綺麗に晴れていました。GPSを見るとバーウィック・アポン・ツイード(Berwick-upon-Tweed)を過ぎた後で、イングランドに戻って来ていました。寒々しかったスコットランドの朝とは一味違います。
この位天気が良いと一日中バルコニーでボーっと過ごしたくなります。でも今日は本クルーズ最後の寄港地、ニューカッスルに昼頃到着です。
前の晩就寝したのは2時を過ぎていたので身体も胃もやや疲れ気味です。朝食はいつもの9F「リド・レストラン」で多少軽めにしました、と言いつつスモーク・サーモンとケイパー、玉ねぎは欠かせません。
今朝は皆行動パターンが同じなのか私達が出向いた9時半頃は大混雑状態で席を確保するのに一苦労でした。が、満車に近い駐車場と同じ、場所は必ずあると信じてうろうろしていれば何とかなるのでした。
朝食後の10時半頃何気なくプールの箇所に来て見ると、ロゴ衣類のセールをやっていました。外国船ではクルーズが終わりに近付くと「今買わないと損」的に50%オフセールをやることが多いです。余程ホーランド・アメリカが気に入ったのか、夫が「WESTERDAM」と本船の絵が書いてあるTシャツと、ジョギング用のパンツを購入しました。
このセール会場は卓球台の置いてある場所ですが、その上に本船を建造したイタリアのフィンカンティエリ造船所の名を刻んだ時計があるのに気付きました。
部屋に戻ると右舷のバルコニーからは丁度タイン川の河口とそれを覆うような防波堤が見えていました。

10時50分頃、防波堤を交わしました。この灯台は1896年に建てられたものだそうで、趣があります。防波堤の向こうには廃墟が見えていて、これまた歴史を感じさせます。

この廃墟はタインマス城と修道院(Tynemouth Castle and Priory)で、城の方は11世紀の記録が残っているそうです。

何やら偉人の記念碑があるので撮影しておきます。後日調べたらこれはコリングウッド伯(Admiral Lord Collingwood)で、ネルソン提督とトラファルガー海戦を共に戦った人物として知られているそうです。海戦で二列縦陣の一方を率いたロイヤル・ソブリン号(もう一方はネルソン乗艦のヴィクトリー号)に乗艦しており、その大砲がモニュメントの下の方に飾られていてこちらを狙っています。

11時頃、古そうな桟橋のあるところを通過しました。「North Shields Fish Market」と書いてあります。
夫は前からの景色を見たい、と10F「クロウズ・ネスト」に出かけて行きました。屋内屋外問わず、前面展望がない客船もあるのでこれは貴重なスペースです。
私は客室で引き続き右舷の眺めを楽しむことにします。魚市場の手前には、昨日エジンバラで関連グッズを買った「王立救命艇協会(RNLI)」の基地が見えました。
11時10分頃、大きな岸壁が見えて来ました。が、本船はそのまま通り過ぎるようです。
「PORT OF TYNE(タイン港)」と書いてある横断幕があったり、ギャングウェイらしきものが置いてあるのを見ると、ここが客船用の岸壁に思えます。
その先にいたDFDS SEAWAYSのフェリー「KING OF SCANDINAVIA」をすぐ横にかすめて通り過ぎて行きます。船籍港コペンハーゲンが現地語で"KØBENHAVN"と書いてあっていい感じです。オスロ 〜コペンハーゲンの便がメインですが、ここニューカッスルとイムイデン(アムステルダムの河口)も結んでいます。
岸壁と思われる場所から約1マイル(nm)進んだ所で行き足が止まり、H旗の翻るパイロット船が見守る中本船は右回頭を始めました。川幅は400mぐらいなので、かなりギリギリな感じですがタグも付けず軽やかです。
20分ぐらいで回り、再びゆっくりと前進を始めました。左舷付けになるので部屋を出て10Fオブザベーションデッキで夫と合流しました。

先ほどの「KING OF SCANDINAVIA」を今度は左に見ます。全長161mと長くないのですがボリュームはあり、バルコニーはありませんが客船のような造りです。

予定入港時刻の12時よりちょっと前に出船左舷着岸しました。それなりに蛇行しているこのタイン川を航行し、タグの力も借りずに回ってしまう外国船の操船は毎度見惚れてしまいます。
着岸後、まだ回っているバウ・スラスターがかき回す水流のところにやたらと水鳥が集まって大騒ぎをしています。何かと思ったら、どうやら水流で小魚が川底からかき回されて水面付近まで上がってくるらしく、それを上空から狙ってダイブしているのでした。
成功率はあまり高くないようですが、経験的にフネの水流があると魚が取れるとわかっているのでしょう。写真はそのうちの一羽が運良く小魚をゲットした瞬間です。
パイロット船のマストには「H旗」のほか真ん中に英国商船旗(レッド・エンザイン)、タイン港(Port of Tyne)と書いた旗がありました。本船のメインマストにも再び英国商船旗が翻っています。

ニューカッスルは19世紀には世界最大の造船の町とも知られ、帝国海軍が黎明期に英国から購入した巡洋艦「浪速(1885年)」「高千穂(同)」や戦艦「八島(1896年)」が建造されました。川の両岸にはその名残のドック跡が見えました。

予定通り12時までに入港したので、最初の混雑を避けて私達は13時過ぎに下船しました。テンダーがないとやはり時間がかからないでラクでした。
降りるとこの地方のものかと思われるバグパイプを持った男性と、中世のコスチュームを着ている裸足の男性がいたので写真を撮影させてもらいました。中世の方は微妙なキャラです。それから地元の観光案内所のブースが出ていたので、入ってみると各種地図やらニューカッスルまでの行きかた、ニューカッスルでの歩き方を丁寧に教えてくれました。
本船が着岸したのは「タイン港」、ニューカッスルからはちょっと距離があるようです。とりあえず港からメトロのタインマス駅まで無料のシャトルバスがあるので行ってみることにしました。
約20分程かけて到着すると歴史ありそうな立派な駅舎がありました。
立派な駅舎とプラットホームを見た夫がいきなり「その気」になったので、1日乗車券を買ってニューカッスルのセント・ジェームズ駅(St James)行きの電車に乗り込みました。

「ニューカッスル・メトロ(2010年9月1日)」
目的地まで駅は11個、途中「ハドリアン・ロード(Hadrian Road)という駅に停まりました。この字面を見て急に「ローマ帝国のハドリアヌス帝の壁(Hadrian Wall)」を思い出しました。30年前近く前にロンドンからはるばるヨーク、湖水地方とドライブ旅行をした際に父がどうしても見たいと拘ったもので、この場所より西方のカーライルという町の辺りまで足を延ばしました。
タインマスから20分程で到着したモニュメント(駅)とはグレイ伯爵(Earl Grey)の記念碑でした。イギリスの首相時代の1832年に選挙法の改正 法案が成立したことを記念して建てられたそうです。また紅茶の「アールグレイ」は彼からの依頼によりベルガモットで着香され、独特の風味をもっています。
このような事態(タインマス散策だけのつもりがニューカッスルまで足を延ばしてしまう)に備え、念のため午前中添乗員さんからニューカッスルの歩き方を教えてもらっていたので、とりあえず町の名前にも入っているタイン川と、それに架かる古い橋を見にいくことにしました。
タイン・ブリッジ(Tyne Bridge)の一部が見えて来ました。意外と高い所に架かっています。
美しいアーチが姿を現しました。そこから数分歩くと川岸に到着したので、見える範囲の橋を鑑賞します。
ニューカッスルには7本の橋が架かっていて、一番下流にあるのがミレニアム・ブリッジ(Gateshead Millenium Bridge)です。ニューカッスルで一番新しい2001年開通の歩行者専用橋で、船を通すため可動橋になっているらしいのですが、その構造と持ち上がり方は大変ユニークです。
その次が先ほどのタイン・ブリッジ(Tyne Bridge)で、1928年に開通したアーチ橋です。シドニーのハーバーブリッジを参考にしたそうで、そう言えば良く似ています。
手前の可愛らしい赤い橋がスイング・ブリッジ(Swing Bridge)です。1876年に架けられたこの橋は旋回橋で、橋桁が真ん中を軸に水平方向に回転して船を通すそうです。
その上流がハイレベル・ブリッジ(高架橋High Level Bridge)で、これが一番古い1849年製です。当時はまだ珍しかった上が鉄道、下が道路の二階層併用橋ですが、名前がストレートです。
ハイレベル・ブリッジの上流が(クイーンエリザベスU・)メトロブリッジ(Queen Elizabeth ll Metro Bridge)で1981年開通です。
川上に見える橋を良く見るため帰りは少しだけルートをずらした所、意図せず「カッスル・キープ」(ウィリアム征服王の長男によって1080年に新しく建てられた城)跡を通ることが出来ました。これがこの町の名前の由来です。
古い時代に廃墟になったらしく、城周辺に普通に道路が走っているのは英国にしては珍しい感じです。

1250年頃に建てられた城門にあたる「ブラック・ゲート(The Black Gate)との間には何と鉄道の高架線路が敷設されていました。

「ブラック・ゲート」を過ぎると正面に聖ニコラス大聖堂(The Cathedral Church of St. Nicholas)が見えて来ました。
一番古い部分は1175年に遡るそうですが、建物の大部分は14〜15世紀のものだそうです。最初から大聖堂として建造された訳ではないので小ぶりですが、立派な造りです。
夫に「地元の教会を見学したい」と言うと退屈だからと嫌な顔をされがちですが、今回のように偶然通りがかった場合は例外のようでした。
14時に町に着いてからまだ40分も経っていませんが、ジョギング時間を捻出しなければならないので駅に戻ることにします。グレイ伯爵のモニュメントに向かって、弧を描いた19世紀の建物群が優雅でした。
帰りの飛行機での重量オーバーを心配して、機内持ち込み用のキャスターを買って帰ることにし、駅の上にあったブリテン島一の規模という「エルドン・スクエア・ショッピングセンター(Eldon Square Shopping Centre)」に行きました。素早く案内図を手に入れ、滞在時間僅か15分で目的物(£10)を仕入れることが出来ました。
買物を含め約1時間のニューカッスル滞在を終え、行きと同じメトロで15時半頃タインマスまで戻りました。


それにしてもこの駅はひとつひとつがとても優美な構造をしていて気になりました。跨線橋のアーチも見事です。と駅に貼ってあった案内板にこの駅の由来が書いてあり、ノース・イースタン鉄道が1882年に開業した駅でした。ニューカッスルまでの通勤客や、近郊から海辺に行く観光客が大勢いたらしく、道理でイングランド南部の避暑地、ブライトン駅(こちらの方がずっとメジャーですが)に似た雰囲気だった訳でした。
シャトルバスを15分程待っている間、もう一度レンガの駅舎をチェックしました。バスで港に向かっている途中で雨が降り始め、これは外ではジョギングは出来ない感じです。バスの中では夫がオランダからの乗船客と話を弾ませていました。

その時の様子 --> 「オールド・エンジニア(2010年8月25日)」
16時過ぎに本船に戻りました。明日は終日航海日なので、ヨーロッパでのジョギングはこれでしばらく出来なくなってしまいます。そうは言っても雨の中走るのも面倒です。がデッキの上よりやはり地面がいいと夫が小雨決行、16時20分頃再び下船することになりました。

随分と丁寧な道路案内表示だと思ったら一番下に「左側通行」と書いてあります。フェリーで大陸から来たドライバーのためのものでした。その先にはドイツ語やオランダ語、北欧系の言葉で同じことが書いてありました。

港のセキュリティ・ゲートの所で雨脚が強くなり、嫌な予感がしましたが走り始めました。と、5〜6分程走った所でついに土砂降りになってしまい、慌てて近くにあったアウトレットセンター(Royal Quays)に避難しました。目の前は英国日産製の日本で限定販売したマイクラC+C(マーチのハードドップカブリオレ)で、数年前にちょっと欲しかったモデルです。
そこで寒さに震えながら10分程したら若干弱くなったのでジョギングを再開しました。結局メトロのパーシーメイン(Percy Main)という駅まで行って引き返しました。
結局雨は最後まで止まず、ずぶ濡れの私達を見たセキュリティゲートの係官の女性が「まぁ…、貴方達…」と同情的でした。フネには17時20分に戻りました。
食事は17時半からなので、急いでシャワーをして身支度をしました。18時前に滑り込み、まずはビールを注文しました。
Appetizers

  • Mille-Feuille of Duck Foie Gras
    Layers of crisp puff pastry, smooth duck liver paté and grilled pears, served with an orange and lingonberry confi


  • Escargots Bourguignon
    Delectable snails baked in herb and garlic butter and Burgundy wine, served with French bread on the side
Soups and Salad

  • Smoked Seafood Chowder
    A medley of assorted seafood in a smoky flavored cream, topped with oyster crackers


  • Italian Menestrone Soup†&††
    Clear beef broth with red kidney bean, vegetables and macaroni, lightly seasoned with oregano and Parmesan cheese
Entrées

  • Surf and Turf†
    Fillet mignon and lobster tail with herb garlic butter on porcini, jasmine rice, surrounded with an array of sautéed vegetables


  • Mixed Grill
    Tender pork rib, lamb chop, veal and bratwurst with assorted vegetable bundle, cerry tomato and golden potatoes
Desserts

  • Master Chef Rudi's 'Première'†
    A white chocolate chef's "toque" filled with a sweetly delicate milk chocolate mousse and decorated with macerated berries


  • Golden Pear Purse
    Crispy pouch of philo dough filles with vanilla cream and pear, served with fragrant red wine coulis
割とテンポ良く食事が出たので1時間半程で終わりました。いつの間にか雨は上がっていて日が差しています。英国は「一日のうちに四季がある"Four seasons in one day"」と形容される程天気が移り変わると言われています。
タイン港のバナーがいつの間にか「Welcome」から「Farewell(ごきげんよう)」に替えられていました。心遣いが嬉しい一方、去れなければならない寂しさが湧いてきます。
東の空から昇って満月が昇っていました。旅行中の月の姿は思い出深く、家に帰って再び同月齢の姿を見ると「あの時はニューカッスルでもうすぐ出港だったな」のように鮮明に記憶が蘇ります。
20時15分頃、本船よりやや上流にいた自動車専用船「CITY OF BARCELONA」が出港していきました。日産専用船のフネで、来島ドック1993年出来でしたがあまり和風に見えないフネでした。日産の英国工場がここから10kmほど南のサンダーランド(Sunderland)にあり、先ほど見たマーチなどを作っています。
今日のタオル動物はエイでした。毎晩丁寧にきっちりと仕上がっています。
予定通り12時に本船は静かに出港しました。タイン川の両岸はすっかり静まり返っているようです。すべるように町が流れて行きました。
右に左に転舵し、右舷後方に大きめの町が見えていました。写真ではわかりにくいのですが、すぐ脇には小型プレジャーボートが数珠繋ぎに係船されていて気を遣いそうでした。
20分かかってタイン川河口に到達しました。右舷には南川の防波堤が見えています。
防波堤を交わし、灯台に見送られました。真っ暗な夜間に川を航行するのは初めてでしたが、何とも言えない趣がありました。夜行列車で家々の灯火を見る感覚と似ていました。
月明かりの中、完全に海岸から離れました。海面を月が照らしていてとても美しい出港でした。