6日目 8月19日(木曜日) グリーノック(グラスゴー) 入港7時 出港16時
毎朝6時半に目覚ましをかけていますが、なかなか一発では起きられません。夫はさっくりと起きて入港シーンを楽しんだようで、私が7時頃起床すると右舷接岸したところでした。
岸壁では微妙な感じのスコットランドのキャラクターが動き回って歓迎の意を表してくれているようでした。
スコットランドらしく、バグパイプのソロで歓迎演奏がありました。

「海兵隊賛歌(Marines' Hymn)と古い丸木橋(The Old Rustic Bridge)」 2.23MB
8時過ぎ9F「リド・レストラン」朝食に行きました。すっかり慣れた足取りで無駄な動きなく料理を取って来ることが出来るようになりました。初日に食べたワッフルを久々に注文し、今回はチョコレートソースとピーナッツでアレンジしました。その場で焼くのでとても美味しいです。
一方今日の夫の盛り付けはなかなか綺麗です。目玉焼きはサニーサイド・アップ(片面焼き)で、私の方はターン・オーバー(両面焼き)スタイルです。
と私達が食べていると窓際の席に老夫婦が座ったのですが、ご主人の方は朝からカッチリとジャケット着用、奥さんの方もエレガントな装いで思わず見とれて写真を撮ってしまいました。ヨーロッパ人が多いせいか、カジュアルな服装の人があまりおらず、外国船にありがちと思っていたTシャツに短パンという組み合わせはほとんど見られませんでした。
スコットランドの大都市グラズゴーはこの港から30kmも離れているので最初から足を延ばすつもりはなく、今日は地元グリーノックをちょっとだけ見るつもりでした。ちょうど添乗員さんが9時半集合で街を散策するというので、参加することにしました。不案内な土地でこのようなサービスがあるのはとてもありがたいです。

ちなみにこの写真は客船ターミナルの「天気予報石」に関する説明で、「濡れていたら雨 」「乾いていたら雨は降っていない」「見えなかったら霧」「なくなっていたら嵐」等イギリス的なジョークが効いています。
港から山側にパトリック・ストリート(Patrick St)を古い教会を右に見てゆるい坂を上りました。この教会に通う女性達が、この地では珍しい日本人の群れに人懐こく話しかけて来たので名前がローマン・カトリックの「聖マリア教会(St Mary's Cathoric Church)」だとわかりました。この地方のスコットランド訛はかなりクセがあって聞き取り辛いです。
ユニオン・ストリート(Union St)で左折しました。反対側に「KENNEDY & Co. SOLICITORS」というのをみつけ、名前と言い単語といい何だかとてもイギリス風だと思い思わずカメラに収めました。

更に進むとマクリーン博物館(McLean Museum and Art Gallery)の建物(左の写真)がありました。城のようにも見える建物は地方裁判所(Sheriff Court)だったようで、小さな町ですが、古い立派な建物が多く残っていました。

一行は今度は本船のオモテが見渡せる所まで行くことになりました。先ほどの道を道なりに左に行くと、交通量の多いウエスト・スチュアート・ストリート(West Sterwart St)にぶつかりました。ちょうと肉屋があったので、値段をチェックしてみます。店の看板には「A.P.JESS Family Butcher」と書いてありこれもイギリス風です。牛肉はかなり安く、豚肉はそれ程変わらない印象でした。
この道を進んだ方に市庁舎があります。イタリア風建築のこの建物には1886年に完成した75mの「ビクトリア・タワー(Victoria Tower)」がそびえ立っています。
港を出発してから50分程、ゆっくりと歩いて漸く遊歩道のようになっている岸壁に到着しました。本船は残念ながら巨大なガントリークレーンに半分隠れてしまっていました。
この場所には税関の建物(Custom House)があるのですが、現在は使われていないそうです。10時半頃添乗員さんによる散策ツアーはここで解散になりました。

この後私達は来る途中で見たスーパーのテスコ(TESCO)に行ってみるつもりでしたが、それよりも岸壁に気になる船が着いています。

すぐにでも出航しそうな雰囲気の小さなフネは近寄ってみると外輪船でした。
船名は「WAVERLEY」、船籍はグラズゴー(Glasgow)と書いてあります。

かなりの年代を感じさせる雰囲気だったので、思わず桟橋にいたオフィサーに話しかけました。本船は1947年に出来た船で、外洋を航海出来る世界で唯一の外輪蒸気船なのだそうです。そして、このフネはこのグラズゴーで建造されたんだよ、と誇らし気に教えてくれました。
オフィサーは私達が「ウエステルダム」の乗船客とわかったのか次の寄港地はどこか聞いてきたので「ポートリー」と答えましたが、「リー」の部分を「Portlee」と思い込んでいたためそういう発音をしてしまい、後で正しいスペル(Portree)がわかり一人でこっそりと赤面してしまいました。

本船はクライド川を出てクライド湾をぐるりと遊覧するフネのようだったので、夫が「最終帰船は15時半だけど乗れますか?」と尋ねると「本船は21時戻りなのでダメですね」と言われてしまいました。
後ろ髪を引かれる思いで「WAVEREY」を後にし、最初に近くにあったショッピングセンターに向かいました。ここに「W H Smith」という書籍と文房具の店があり、高校生時代に日参した懐かしさから入って船と車の雑誌や辞書を購入しました。
「トラクター」や「路線バス」など英国は細分化したマニアックな雑誌が多いのですが「錦鯉」の雑誌があったのには驚きました。
それから職場へのみやげ用チョコ等を買うためにテスコに行きました。大陸からのものが多いのか、イギリス産の野菜がわかるようにディスプレイしてありました。
ビールは充実の品揃えで日本船なら持ち込むところですが、外国船はそれが出来ません。ベルギーのステラ・アルトワ24本入りが15ポンドどは僅か2,000円と喉から手が出るほど欲しい一箱です。
みやげ物のほか日本では手に入りにくい「リークスープ」の素やお酢味のポテトチップス、それからフネ用のツマミと飲料水(TescoのPB、PERTHSHIREという水2Lが35p)を買って帰りました。帰りの飛行機で重量制限があるためあまり物を買えないのがフラストレーションでした。
船にはちょうどお昼頃戻りました。今晩のフォーマルは旅行会社から有料レストラン「ピナクル・グリル」の招待を受けているので、昼は何も食べないことにし、すぐに着替えてジョギングに出かけることにしました。
先ほどは主に船首方向の散策だったので、今度は船尾の方を攻めることになりました。
ちょうど海沿いに素晴らしい道(Esplanade)があり、爽やかな北国の夏の風を受けて気持ちよく走りました。
2km弱で道が陸の方に曲がって海から離れてしまったため、ここで引き返すことにしました。
帰りも行きと同じように芝生のグリーンベルトを走りました。右側に家が並んでいますが、海に面したこんなロケーションに家があったらどんな気分になるでしょうか。
実質30分くらいのジョギングを終了し、船に戻りました。この時期の日本は殺人的に暑いので、ラクに走れる涼しい気温はとても有り難かったです。
戻ってシャワーをしたら夫が気絶してしまったため、14時20分とかなり早かったのですがバルコニーで一人でビールを飲むことにしました。

何気なくコンテナヤードの作業を眺めていたら、その先に先ほどみた「ビクトリア・タワー」が見えていました。その手前にテスコが写っています。

そう言えばまだ寄港地旗を撮影していませんでした。ダブリンはアイルランド国旗、ベルファストは連合王国の商船旗だったので、このクルーズ初のスコットランド国旗(St Andrew's Cross)です。
それからやはりちょっとお腹が空いたので、9Fの「リド・レストラン」に行き、コーヒーとクッキーを部屋に取ってきました。相変わらず夫は寝ているので使えません。
15時半の最終帰船時間になってもターミナルからの人が途切れないのは日本船と随分違う感覚です。
15時40分頃からバグパイプの音楽隊が送別の演奏を始めました。朝のソロも風情がありましたが、ドラムと太鼓、それから複数のバグパイプのバンドは迫力が違います。もともと好きな楽器なので夫としばし感動しながら眺めていました。
そのうち、港の職員とその家族みたいな感じの地元の人たちがスコットランド国旗と王室紋章旗を持って見送りにやって来ました。
素朴な雰囲気とバグパイプ、そして最後に「Scotland The Brave」の演奏が始まると本船も出港の汽笛を鳴らし、それは感動的な出港シーンとなりました。

「勇敢なるスコットランド(Scotland The Brave)とウエステルダム号の汽笛」
1.42MB==============汽笛の音量にご注意====================
外国での出港は素っ気無い物が多いのですが、ちょっとジーンときてしまいました。今回は色々考えた結果右舷の客室にしてあったため、バルコニーから眺められたのがとても良かったです。
そしてフと気が付くと例の微妙なキャラクター人形が感極まって仰向けに倒れてしまっていました。これには近くの客室の乗船客にも大ウケでした。彼は自分では起き上がれないらしく、しばらくそのままの状態で見送ってくれました。
十分離岸するとフネは右回頭を始め、先ほどジョギングした海岸沿いの道が見えました。あの場所にいたらゆっくりとクライド湾に出て行く本船がとても綺麗に見えるでしょう。
余韻に浸りつつ時計を見ると、今回のツアー参加者のためのプライベートパーティーの時間が30分後に迫っていました。余裕に感じますがフォーマルな上まだ素顔なので支度にかなり時間がかかります。毎度タキシード着用に苦戦する夫と二人で必死に用意をしたのでした。外の景色がいつの間にか丘陵地帯に変わっていて、軍艦のような小さな船が見えました。

パーティーは10F「クロウズ・ネスト」の一角が貸し切られてあり、そこで簡単に自己紹介をして交流を深めました。カクテルの「ピニャ・コラーダ」を頼んだら、ファストフードのシェイク(Lサイズ)以上の分量がありびっくりしました。

外を見るとだんだん湾が広がっていき、青い海がとても綺麗です。
石炭の積み地が見え「F.D.VITTORIO RAIOLA」という貨物船がこれから積み込みを開始すべく待機していました。見た目が日本で出来たフネっぽいねと夫と話したのですが、後日調べたらまさしく山口県の新笠戸ドックでこの年に出来たばかりのパナマックスサイズでした。
17時半になったので、世界のグルメに名高い2F「ピナクル・グリル」に移動しました。ツアー参加客全員が座れる大きなテーブルがリザーブしてありました。
まだ早いため他の客は見当たりませんが、高級感溢れる雰囲気があります。通常20ドルのカバーチャージがかかるところ、今回は旅行会社の招待なので得した気分です。

ピナクル・グリル(The Pinnacle Grill)のメニュー

何を食べるか悩みに悩んだ結果、グリルなのだからと王道のステーキをメインに据えました。種類をフィレミニオン、ニューヨーク・ストリップ、骨付きリブアイ、ポーターハウス、リブアイの中から選ぶのにまた悩み、前菜は普段なかなかあまり食べられないという観点でロブスター・ビスクにしました。

注文が終わるとまずハムとオレンジのアミューズが出て来ました。
The Beggining

  • Dangeness Crab Cake
    spiral shaved cucumber and sweet chili-musutard sauce


  • Lobster Bisque
    cème fraîche and aged cognac
The Grill

  • Fillet Mignon Burger
    a half-pound of freshly ground 100% beef, fine herbs and truffle-infused cooked to your liking, served with fried onion rings and tomatoes


  • New York Strip Steak
    served with our own hand-crafted sauce: béarnaise horseradish-mustard
Desserts

  • Fresh Fruit


  • Not so Classic Baked Alaska
フネの定番デザートと言ったら「ベイクト・アラスカ」ですが、ここでは火のついたリキュールを本体にかけてフランベする贅沢なもので、テーブルに来てもまだ燃えていました(上の写真)。

それにしても夫は折角のピナクル・グリルだと言うのに「クラブ・ケーキにハズレなし」のクラブ・ケーキ、他でも食べられそうなハンバーガーとフルーツ盛り合わせと食に対する意気込みが全く感じられませんでした。
このほか気になったメニューを親しくなった人が食べていたので、写真を撮影させてもらいました。左が「LAND AND SEA」でフィレミニオンと大海老のグリル、右は三種類の味のティラミスでなかなか凝っていました。量が多く、私を含め皆途中でギブアップしてしまいました。

そのまま20時からのメインショーに流れましたが、途中で夫が撃沈してしまったので、その後の夜遊びは控えることにしました。
が、昼に「今日だけ寄港地Tシャツが2枚で20ドル」というチラシが入ったので3Fの「シグニチャー・ショップ」だけ寄り、「Westerdam」ロゴの入ったものと「アイルランド」の2枚を買いました。毎度船会社の思う壺状態です。
21時半頃部屋に戻ると、今日は愛嬌のある犬が待っていました。
夜のバルコニーではGPSデータロガーが頑張って30秒毎に緯度・経度を計測し続けています。