5日目 8月18日(水曜日) ベルファスト(北アイルランド) 入港7時 出港23時
8時にオプショナルツアーの集合なので、6時半に目覚ましで起き上がるとフネは既に回り終え、寒々しいベルファスト港に着岸しているところのようでした。

特に案内放送はなかったのですが、目の前レンガの建物(排水ポンプ舎)の奥があの「タイタニック号」を建造したハーランド&ウルフ社(Harland & Wolff)のドライドックです。
1912年の処女航海で沈没した「タイタニック」は、ちょうど100年前の今頃(1910年8月)建造の真っ最中だった筈です。長さは269m、幅28mは本船より若干スリムですが当時世界最大の客船でした。
普段出勤する時間を考えると早い時間の集合という訳ではないのですが、なんだかとても早い気がしたので朝食は行かず、コーヒーとパン類を夫に取って来てもらって部屋で食べることにしました。デニッシュとリクエストしたのに、普通のパンだったのが少々残念でしたが贅沢なことは言えません。
本日のツアーは「ジャイアンツ・コーズウェイ(Giant's Causeway)」に行くツアーで、片道たっぷり1時間半かかる場所に行くものでした。よってトイレ地獄の恐怖から、水分は前日から控えて備えていました。毎度という訳ではないそうですが、今回のツアーには添乗員さんが同行してくれるので安心です。
バスは8時45分頃港を出るとまもなく高速道路に入り、ひたすら北上しました。このクルーズで初めてアイルランド島の郊外というか田舎に出たのですが、イギリス本土と似た感じのなだらかな丘陵が広がっていました。
1時間程走るとブッシュミルズ(Bushmills)という街に入りました。ここには有名なアイリッシュ・ウィスキーの蒸留所があるそうです。ちなみにスコティッシュ・ウィスキーは2回蒸留しますが、アイリッシュは3回なのだそうです。あとはシェリー樽がどうのと言っていましたが、残念ながらちゃんと聞き取れませんでした(熟成はシェリー、ラム、バーボンの熟成に使われた古オーク樽を使用するそうです)。世界五大ウィスキー(他はアメリカン、カナディアン、ジャパニーズ)に数えられるアイリッシュ・ウィスキーですが、蒸留所は4つしかないそうで、ブッシュミルズは北アイルランド唯一です。
そこから10分程で海が見え、ほどなくジャイアンツ・コーズウェイに到着しました。ジャイアンツ・コーズウェイは1986年にユネスコの世界遺産に指定された、柱状摂理の奇岩が集まった断崖です。予備知識がほとんどないまま行ったのですが、かつては火山があったことを偲ばせる場所でした。ナショナル・トラストが管理していて、自然に配慮しつつもビジターセンターから岩が沢山ある場所までシャトルバスで行くことも出来ます。

再集合まで1時間半ぐらいあったので、歩くことにしました。歩き出してすぐ左側に「らくだ岩(The Camel)」が見えました。

15分程歩くと六角形状の柱が沢山並んだところがありました。これが「ジャイアンツ・コーズウェイ」と呼ばれる海にせり出した部分です。

溶岩が冷えて固まる時に収縮して出来た時のひび割れでが柱状になったものが柱状節理で、泥が感想した時に出来るひびと同じ原理のようです。日本では東尋坊が有名で、北海道の層雲峡も大雪山の火山活動によって出来た柱状節理です(写真は層雲峡の流星の滝)。
横から見ると見事な縦のひび割れで、結構な高さがあります。

通常はシャトルバスの終点の辺りの「ジャイアンツ・コーズウェイ」やその近くにある「巨人の長靴(The Giant's Boot)」を見たら十分ですが、時間に余裕があったので長靴を見る前に「パイプオルガン(The Organ)」という場所まで登って行くことにしました。先ほどの場所をどんどん離れて10分程坂道を上りました。

ここは崖肌に柱状の岩が長く露出していて、パイプオルガンのパイプに似ていることからその名がついたようです。事前には見渡せず、いきなり頭上にそれがある、という感じでした。

この先どうなっているか気になったので、時間の許す限り更に上がっていくことにしました。
「パイプオルガン」の場所から5分強で岬の先のビューポイントまで到達し、その先の「円形劇場(amphitheatre)」と呼ばれる場所を見ることが出来ました。
右上の部分には「煙突(The Chimneys)」と呼ばれる石柱があります。そこから先はぬかるんだちょっと危険な感じのトレイル道になっていたので引き返すことにしました。
いつの間にか空はすっかりと晴れ渡り、上からの景色は素晴らしいの一言です。
もう1つ、有名な「巨人の長靴」をチェックしに行きました。たまたま添乗員さんがいたのでシャッターを押してもらうことが出来ました。靴の右斜め上あたりが「パイプオルガン」のある場所ですが逆光でよく見えていません。
この岩を抜けるとシャトルバス乗り場になります。ちょうどバスがいたので帰りは乗って帰ることにしました。
ビジターセンターに戻ってみやげ物屋を覗きましたがあまりこれと言ったものはなく、夫が小学生のごとく「喉が渇いたからコーラを買ってくれ」というのを「缶はダメ」と却下し、蓋のあるミネラルウォーター(£1.5-)を購入しました。
1時間半の自由時間があったので、かなりの距離を歩くことが出来て満足でした(左の写真をクリックするとジャイアンツ・コーズウェイの詳細説明地図が開きます)。

11時30過ぎに出発したバスは10分程で「ダンルース城(Dunluce Castle)」に到着しました。13世紀ぐらいから存在した城で断崖にそびえ立っていますが現在は廃墟です。

今度は20分程先の「ホワイト・パーク・ベイ(White Park Bay)」の展望台に停車しました。白い砂浜と左側にはポートブラダン(Portbraddan)の町が見えています。
そして右の方には遠くスコットランドの「アイラ島(Isle of Islay)」を見ることが出来ました。現地のガイドさんによると、ここ辺りでは昔から行ったり来たり交流があったそうです。
最後にバスはその先にある小島「キャリック・ア・リード(Carrick-a-Rede)」を見物してから帰途につきました。島には細い吊橋がかかっていてそれで渡れるそうで、高さは20mぐらいありそうです。
8時半過ぎ出発、13時半戻り予定のツアー(USD109)でしたが、実際に本船に戻ったのは14時過ぎになりました。ツアーの説明には「時間があればダンルース城に寄ります」と書いてあったのが、更に展望台まで行き、アイラ島が見えたのはラッキーでした。岸壁では本船の後方に小さい綺麗な船が着岸していました。
朝からほとんど何も食べておらず流石に空腹だったので9Fの「テラス・グリル」に行くことにしました。メインマストの寄港地旗をチェックすると、イギリスの国旗ではなく「レッド・エンサイン」と呼ばれる英国の商船旗が掲揚されていました。
「テラス・グリル」で夫は大好物のタコスを、私は念願のハンバーガーを食べることが出来ました。空腹に染み入りました。
今日はジョギングが未済だったので、ハンバーガーが落ち着いた15時半過ぎに3F「メイン・デッキ」に走りに出かけました。船首の係船装置のある場所がメンテナンスでドアが開放してあったため、覗き込んで撮影しました。最近のフネはこの部分はこうして中に入っているため、乗船客はモアリング・ウィンチやウィンドラスを見る事が出来ません。
数周したところでデッキをぐるぐる回るのに飽きたのか、突然夫が下船して港周辺を走ろうと言い出しました。突然の予定変更は色々困るのですが、黙って従うことにします。下船してまず先ほどの綺麗な船を見に行ったところ「SAGA RUBY」というフネでした。

「M/V SAGA RUBY(2010年8月31日)」
港を出ると狂犬病の予防に関する表示が出ていました。英国は世界でも数少ない狂犬病清浄国(もちろん日本も)なので、外来の動物の入国には大変厳しい検疫を課しています。
夫の本能の趣くままのルートでしたが、港のあたりをチョロチョロ走るだけかと思ったら思い切り中心部に入って行っていました。
正面に見えるのが市庁舎(City Hall)です。
由緒正しそうな建物だったので撮影したらマーチャント・ホテル(Marchant Hotel)という5つ星のホテルでした。ベルファストの街は過去の歴史からつい先入観が入ってしまうのか何だか暗い街だと感じました。
岸壁の近くに立派な港湾局(Harbour Commissioners Office)と長老派教会(Sinclair Seamen's Presbyterian Church)がありました。
距離の割に時間がかかってしまったので、本船には17時過ぎに帰船しました。急いでシャワーをし夕食に行く準備をしたのですがちょっと遅れました。

Appetizers

  • Veal and Mushroom Ragout
    Served in flaky puff pastry


  • Sashimi of Salmon with Wasabi Mayonnaise
    Served with pickled ginger, soy sauce and a finely sliced cucumber and mango salad
Soups and Salad

  • White Bean Soup Piemontese
    Hearty bean soup filled with chorizo sausage


  • Seafood Soup Provencal
    Saffron seafood broth, with white fish, bay shrimp, mussels, fennel, potato and diced tomato, served with a rouille crouton
Entrées

  • Curried Vegetable Cutlet
    Minced vegetables fkavoured with Indian spices and fried to a golden brown served with garbarizo bean
    fresh tomato sauce with baby bok choy


  • Grilled Ribeye Steak with Mixed Olives
    Served with vegetable ratatouille and rosemary roasted potato
Desserts

  • Delicate Fruit Swan no sugar added


  • Bee Sting
    Pastry filled vanilla créme and topped with a cruncy almond crust

20時頃満腹して部屋に戻ると待っていたこれは魚でしょうか。
バルコニーの外はまだ明るく、タイタニック・ドック(写真の中央)のあたりも見えていました。
後方に目をやるとH&Wと書いてあるハーランド&ウルフ社の巨大クレーンが見えていました。旧約聖書に登場する怪力サムソン(Samson)と巨人ゴリアテ(Goliath)の名が付いている、ベルファストのランドマークだそうです。サムソン(左)の方がゴリアテよりも10m程高い106mです。
この後観光疲れか睡魔が襲って来て、二人して2時間近く気絶してしまい、ハっと目を覚ますとすっかり日が暮れていました。このまま続けて気絶したいのですが日本を出てはや6日目、夫がそろそろネット接続してメールのチェックをしたいと言います。またブログの原稿も作成してあるので、22時頃無線LANのホットスポットである3Fの「インターネット・センター」に下りて行きました。
がうまく繋がりません。LANは検知しているのですが何度やってもIPアドレスが割り振られません。インターネットマネージャーに「停泊中は接続出来ないのか」尋ねましたが「普通に繋がる筈ですよ」とのこと。設定はいい筈なのにどうしてもダメで、あきらめかけた頃その彼が通りがかり私のPCを覗き込みました。PCの設定は万国共通、表示される言語は違っても画面は同じです。手馴れた感じであちこちいじったあとどこもおかしくないのを確認し、何回目かの挑戦をすると繋がってしまいました。「今、何かした?」と聞くと「いや、何も・・・」。
結局原因はわかりませんでしたが、ネットに接続することが出来たので無事ブログを書き込みました。
「英国周遊クルーズ(2010年8月19日)」

部屋に戻るとそろそろとフネが動き出していました。
タイタニックの生まれた造船の街であり、またかつてはカトリックとプロテスタントの対立が激しかったベルファストを出港しました。世界遺産観光もあり、かなり盛り沢山の一日になりました。