苫小牧東 23時30分発→敦賀 20時30分着 日出4:05(竜飛岬沖) 日没19:11(福井沖)
フェリー乗り場行きの連絡バスの時刻が近付いて来たので、駅前のバスターミナルに移動しました。
「新日本海フェリー」と書かれたE番乗り場に向かったのですが、ターミナルは人っ子一人おらず閑散としています。先程来霧が発生しており、とても寂しい雰囲気です。
5分前になってもバスが来ず、少々不安になったものの21時57分にフェリー乗り場行きのバスがやって来ました。
この連絡バスは、新日本海フェリーの運航日だけ出港時刻に合わせて運行されていて、料金は一人700円です。このバスも夫と私だけの貸切状態となりました。

苫小牧東港は太平洋フェリーや商船三井フェリー、川崎近海フェリーのターミナルである苫小牧港と離れた場所にあります。チケットを取るとき「苫小牧駅からのタクシーはお勧めできない」と言われた程ですが、それでも30分はかからないだろうと勝手に思い込んでいたところ、その30分を過ぎても一向に到着する気配がありません。
濃霧で見通しが悪くなっており、それでなくとも街灯が少なく真っ暗な中、私達二人だけを乗せて走るバスはまるで60年代初期に放送されたTVシリーズ「トワイライト・ゾーン」の一シーンのようです。思わずあの「ニンニンニンニン・ニンニンニンニン」 という耳に障る旋律が頭に浮かびました。
「着きましたよ」と振り向いた運転手の顔は「キャ〜〜!!」等ということはなく、40分程で霧の苫小牧東ターミナルに到着しました。「苫小牧」を名乗るのはどうかと思う程、苫小牧駅からは距離がありました。

「陸と海と空 その3 苫小牧連絡バス編(2013年6月17日)」
霧に浮かぶ本船「すずらん」の白い船体は、先ほどの「トワイライト・ゾーン」の続きでやや非現実感がありました。

22時45分の乗船開始まで5分程時間があったので、チェックインのあと一旦ターミナルビルを出て本船を撮影しましたが、近過ぎて全容は写せませんでした。

この時期は閑散としたターミナルビルのみやげ物屋で、何か北海道らしいものをと思い、悩んだ挙句ロイズの板チョコを1枚だけ購入し、夫に急かされて慌しく乗船口に向かいました。
一歩入ると別世界が広がっていて、ようやく現実に戻った気分になりました。霧が濃いと何故か幻想的な気分に陥ります。
就航してからまだ一年経っていない本船(2012年6月20日就航)はとても綺麗です。早く船内探検したい気持ちを抑え、まずは邪魔なキャリーバッグを置きに、エレベーターで予約した部屋のある6甲板に上りました。バリアフリー対応をしているので、エレベーター完備です。
エレベーターを降りて右側にある、赤地に「ゆ」と書いた暖簾が目に飛び込みました。本船の大浴場は一番上のフロアにあるので、部屋から近くて便利そうです。

「スイート、ジュニア・スイート、ステートルームA」と書いてある廊下に入っていくとその先に目指す部屋がありました。ジュニア・スイートはドアの色が通常のステートルーム(白)と異なるこげ茶色で、豪華な感じを演出しています。

本船はカードキー方式です。ドアを開けても廊下から客室がまる見えにならないよう、ドアの先は擦りガラスで仕切られて目隠しがされているところがなかなかです。
擦りガラスの反対側は茶器セットとキャビネットの中には冷蔵庫があります。
そして目の前には広々とした客室が広がりました。東京からの移動、アウトレット、苫小牧駅での晩酌、トドメにトワイライトゾーン体験という長かった一日が終わり、ようやく今晩の宿にたどり着きました。
とりあえずトイレやバスをみてみます。この部屋より上級のスイートルームでは、このバスタブが海に面しているので部屋にいながら展望風呂を楽しめます。
荷物を置いて船内探検に出かけることにしました。まずは姉妹船の「すいせん」と共に日本初(と言うことは多分世界初)だと言う本船自慢の露天風呂をチェックしに行くことにします。この吹き抜けのスペースは贅沢だと思いますが、この塔のようなオブジェは何なのでしょうか。
大浴場の脱衣所はとても広く、脱いだものをロッカーに入れられるので安心です。
そして洗い場もひとつひとつ仕切られていて、広さも十分にありました。奥の木のドアはサウナで、右の鉄の扉の外が露天風呂です。出港前だからか、まだ誰もいないので撮影が出来ました。
そして露天風呂です。広さは十分とは言えないものの、洋上を走る船の上でのこの施設は画期的です。これは是非入らなくてはいけません。
ふと気が付くと出港時刻になっていたので、慌てて外に出て行くと霧の中を既に離岸しているところでした。岸壁を離れてすぐに出港の汽笛が鳴りました。
本船は入船着岸だったので船を回しましたが、霧で見通しが悪くこれからこのフネがどちらに進むのか全く見当がつきません。それでも漸く回り終え、前進し始めるともう一度汽笛が鳴りました。

「出港時の霧中信号@」 348KB
律儀だなと思っているとその1〜2分後ぐらいに再び汽笛が鳴りました。つまりこれは周囲の船舶に自船の位置を知らせる霧中信号だったのでした。この時期の北海道の太平洋側は霧が多く、2007年ににっぽん丸で根室を出港した時も濃い霧が立ち込めていました。霧の港から離れながら聴く汽笛の残響も風情があります。

「出港時の霧中信号A(残響大バージョン)」 338KB
部屋に戻ると汽笛の音源に近くなり、規則的な間隔でかなり大きな音が聞えています。このままずっと鳴り続けるのかと心配になりましたが、いつの間にか港外に出たらしく吹鳴がなくなりました。

「バルコニーで聞こえる霧中信号(残響なし)」259KB
このあと0時半までオープンしている大浴場に行きました。乗船客が少ないので、私以外は2人だけとかなりゆったり使うことが出来ました。そして展望露天風呂ですが、真っ暗で何も見えないものの、冷たい道南の夜の風が吹き込んで来るので頭が涼しくイイ感じです。これは明るい時間にも是非入りたいと思いました。
ジュニア・スイートに付いている食事はすべてグリルレストラン、マルゴーで提供されます。ランチとディナーであれば他の船室に宿泊していても個別に予約して料金を払えば食べることが出来ますが、朝食はその対象外のようです。
ということで翌朝8時にマルゴーに赴くと、食事をするのは何と私達二人だけでした。昨晩のバスから貸切状態が続いていますが、少々申し訳ない気がします。なお、本船の予約サイトでは直前までスイートも1室埋まっているように見えていたのですが、キャンセルになったのでしょうか。
アペタイザー(?)にオレンジジュースが運ばれてきました。

北海道から敦賀行きの南航の朝食は和食で、朝からこんなに贅沢をして良いのかというような食事を楽しみました。食後にはコーヒーもありました。

食事の後は明るくなった船内を探検することにしました。 船内探検(次ページ)

本船の施設は充実していて、また乗りたくなる快適さでした。ただ、安全面への配慮で仕方ないのかもしれませんが、本船は航行中一切両舷のデッキに出られなかったのは残念です。
一通り探検終わり10時頃部屋に戻ると綺麗に晴れていました。
試しにバルコニーに出てみると素晴らしい眺めです。そして僚船「すいせん」とのすれ違いが15分後である旨案内放送がありました。フネの行き交いは左舷同士が多いのですが、この航路では右ですれ違うようです。それにしても最高速度27.5ノット(時速50km)を誇る本船は、時速30kmぐらいで走る客船と明らかに引き波の勢いが違います。
本船ではデッキに出られるのはレストランの後ろのトモの部分だけで、ガラス越しには見えるのですが、ガラスがない一番後ろの部分では真横と後方しか見る事が出来ません。定期航路ならではのハイライトなのですが、ちょっと残念な環境です。ちなみに特等以上を予約するのであれば、この行き交いのために右舷の部屋を指定するのが通のようですが、私は右舷の部屋だとフネが逆走しているように感じてしまうため却下しました。

先客がいたので思い切りという訳にはいきませんでしたが、それでも鉄板越しに手を伸ばして何枚か撮影することが出来ました。こちらから順光だったので白く輝く船体は綺麗でした。

お互いに27ノット出していれば、すれ違いの相対速度は100kmにもなります。定期航路ならではのイベントは10時20分ぐらいからたったの5分間とあっと言う間に終わってしまいました。
と、ビンゴタイムの10時半が迫っていたため、そのまま会場であるカフェコーナーに突入しました。
定員600名に対し贅沢にも乗船客は50名ちょっと、うちビンゴに参加したのは半分の23名とのことらしく、夫か私のどちらかは何か当たるだろうと思いましたが、なかなか肝心の穴が開きません。
が漸く夫が末等である本船の絵ハガキを当てることが出来ました。
ちなみに一等は本航海限り有効の商品券3,000円分、二等はパウンドケーキ、三等はソフトクリームやソフトドリンク券でした。客船のようなエンターテイメントサービスがあるのは流石客船「ぱしふぃっく・びいなす」を擁する新日本海フェリーグループです。
ここで夫は運動タイムだと言い出しました。本船には一応ジムがあって、あまり速度が出ないどちらかと言うとウォーキングマシンが置いてあるのは事前に確認済みでした。どんなものかと行ってみると、やはり時速8kmまででしたが、それでも身体を動かせるのは有難いです。45分もかかって6kmを無事小走ることが出来ました。
汗を書いたらやはり大浴場です。陽光の下、自慢の露天風呂をたっぷりと堪能しました。これは明るいうちにもう一度入らなくてはという気持ちになりました。
昼食は12時半からと決まっているので、時間ちょうどにグリルにおもむきました。先程運動を終えているので、今日はランチタイムからビール解禁です。メニューは関東便(新潟)と関西便(敦賀・舞鶴) × 北航と南航の計4種類のバリエーションがあります。

北海の春 創作彩々ランチ 〜 海山野の旬食材の味わいをお楽しみください 〜
◎オードブル
春野菜と魚介のカルパッチョ ジェノベーゼソースと共に

◎スープ
後志産越冬南瓜 温製南瓜スープ
◎春爛漫の一皿
  • グリーンアスパラのスモークサーモン巻
  • 桜鱒の木の芽田楽焼
  • 子持海老
  • 春鰊マリネ
  • 山菜揚げ レモン添え
◎食事

創作手鞠鮨3種(道産生ハムとクリームチーズ、白身魚昆布〆、蟹)ピクルス添え
◎デザート
フランボワーズケーキ 苺添え

◎コーヒー 紅茶

料理は期待通り大変美味しかったです。4月〜10月の期間しか食べられないのは、冬季は人が少ないこともあるでしょうが、冬の日本海の荒波では優雅な食事どころではないからかもしれません。
今回も私達二人だけかと思ったら、先ほどビンゴの時に一等賞を当てた夫婦とその友達夫婦が4名で食べに来ていました。なお、スイートやジュニアスイートに乗船した場合には食事に関する案内を書いた紙が配られ、グリルに持って行ってサインをもらいます。
天気は良いのですが、バルコニーに出ると空気はひんやりとしていて爽やかで、この感じはナミビアのあたりの海と雰囲気が似ているように思いました。どちらも寒流を航行しているという共通点があります。

15時頃、輪島沖の小さな島がいくつか見えました。
後で調べた所七ツ島と言い、5km四方の中に7つの島が点在しているそうです。すべて無人島ですが、一番大きい大島には七ツ島灯台が見えました。
売店で気になる新日本海フェリーグッズも仕入れ、すっかり満足です。船名「すずらん」と入ったTシャツ等を購入しました。
もう一度船内探検に出ると、筝曲のコンサートをやっているところでした。それを横目に見つつトモのデッキに出ると、ドッグランでウェルッシュ・コーギーが飼い主さんとリラックスしているところでした。
時間が経つにつれ徐々に散らかっていった荷物を下船用にざっくりと纏めたりしていると、もう17時を過ぎてしまいます。夕食は18時半からなので、最後にもうひとっ風呂浴びることししました。今回はビールを美味しく飲むために、初めてサウナに入ってみました。相変わらずの貸切状態だったので快適でした。
お風呂から上がって部屋に戻ると、近海郵船のRoRo船「つるが」が同航していました。苫小牧を20時半に出発し、敦賀には21時に到着するスケジュールで、23ノットも出すようですが本船「すずらん」の快速には敵いません。
それを見ながらバルコニーでビールを飲みました。デラックスルームもバルコニーがありますが、デッキチェアーを置いていないので、立ち飲みになりそうです。それでもフェリーでこれだけバルコニーのある客室を備えるのは画期的な造りだと思います。
グリルに行く前に、通常のレストランはどういう感じなのか見に行きました。昼間にグリルでサービスしてくれた女性のクルーが笑いながら「こちらで召し上がりますか?」と声をかけてきました。おかずは290円の揚げ出し豆腐から680円のビーフシチューまで多種多様で美味しそうでした。
時間にグリルに行くと、今回は昼間とは別の夫婦が1組でした。夕食のメニューはかっちりした和食です。

春の船旅懐石 〜 日本海の船旅、旬の山海の幸でお楽しみください 〜

◎珍味三種
・鶯豆腐
・菜の花の胡麻和え
・烏賊の鱈子和え

◎造里
二種盛り あしらい色々
◎三段重
  • 焼物  巻焼玉子、焼魚、鶏山椒焼、蝦浜煮、谷中生姜添え
  • 揚物  春の旬野菜・山菜揚げ三種
  • 蒸物  雲丹焼売銀庵掛け マスタード添え
◎食事
旬菜鮨と牛蒡巻

◎汁物
帆立稚貝汁
◎水菓子
北海道バニラアイス  ミックスベリースープ ミント添え

どれも凝っていて素晴らしい出来でした。

なお、サービスしてくれたクルーによると、GWや夏場は団体客が入ったりするのでかなり混雑するが、今のこの時期は空いていてお勧めですとのことでした。
戻って最終パッキングをした後はトモのデッキに出て入港ワッチです。が暗い中の入港は昼間ほどはワクワクせず、むしろ寂しい気持ちにりました。
敦賀湾は若狭湾の支湾で、進入時に右に見えるのが敦賀半島です。一番奥には日本三大松原のひとつ、「気比の松原」があるのですが、日が暮れてしまうとほとんど何もわかりません。
フェリーターミナルらしきものが見えてくると、本船は左回頭を始めました。
トモで着岸までしっかり見届けてから部屋に戻るともう下船案内があり、今回徒歩の下船は数名だったらしく、急かされるようにフネを降りました。
ゆっくりと船旅の余韻を楽しみたいところですが、JR敦賀駅までの連絡バスが待っているためそうもいきません。
果たして岸壁で敦賀駅行きのバスが待っていましたが、先を急ぐ年配の女性2人が(おそらく脱兎のごとく下船して)「やっと来た!」と私達のことを待ち構えていました。運賃は340円です。
10分ちょっとで敦賀駅に到着し、今回のフェリークルーズは無事終了しました。今晩は敦賀駅前のホテルに一泊し、翌日は夫の立っての希望により滋賀県の彦根城を見学してから帰京することにしています。

「陸と海と空 その6 関が原編(2013年6月24日)」
翌朝(6/10)ジョギングで港方面に行くと、私達の「すずらん」と同日の19時半に苫小牧東港を出港し、秋田、新潟と寄港して朝5時に到着した「フェリーあざれあ」の姿を見ることが出来ました。【2013年12月記】