にっぽん丸 新春の瀬戸内海・宮崎クルーズ乗船記 (2011年1月10日)

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3日目 宮崎 入港8時 出港18時
7時に起きてバルコニーに出ると、ちょうとシーガアイアの前を通過する所でした。ここは丁度一年前に「お正月合宿」と称して妹夫婦の2010東京マラソンのため走りこみを行った所です。一年前に来た場所にこうして客船で来られるのはちょっとした感動です。背の高いシェラトン グランデと宿舎だった右から2番目にあるサンホテルフェニックスの距離は約1.5kmあり、いくら走っても近寄らなかったことを思い出しました。

夫のブログ「宮崎合宿」(2010年1月2日) 「年寄りの冷や水」(2010年1月4日)
着替えるやいなや夫はすっかりお気に入りの7F「ホライズン・ラウンジ」で入港ワッチを開始しました。7時30分頃、タグボート「よど丸」が本船を右舷後方から押すために回り込みました。
この日の当地の日出時刻は7時15分、雲に隠れていた朝日がようやく顔を出しました。
岸壁に向かってまっすぐ進入した後、タグに押されて右回頭し定刻より少し早い7時45分に左舷着岸しました。無線受信機のおかげで、目論みどおりこの着岸プロセスはますます楽しいイベントになりました。

そろそろ朝食かと思ったところ、双眼鏡を覗いている夫が「大きなフネが入港してくる」と言うのでもうしばらくスタンバイしていることにしました。

このフェリーは「おおさかエキスプレス」で、大阪南港を利用すると「みやざきエキスプレス」と交代でかもめフェリーターミナルに停泊していた、宮崎カーフェリーのフネでした。本船「にっぽん丸」は今晩18時に宮崎を出港して神戸に着くのは14時ですが、フェリーは19時に出港して朝7時半に大阪に着いてしまいます。フェリーの方は瀬戸内ではなく足摺、室戸回りですが、25ノットも出して走ります。ルーティーンワークとはこんなモン、とばかりに軽々と着岸していました。
客船の後ろにフェリーが並ぶ姿は、国内では初めて見たかもしれません。「おおさかエキスプレス」は長さ170m、幅27mと「にっぽん丸」より一回り大きいのですが、開放甲板をカウントしないため、総トン数は2万トン弱です。
食事は8時45分までに入らなければいけないので、ワッチはこの位にして2F「瑞穂」に下りて行きました。あまり食欲がなかったので、私は適当に取って来られる洋食にしました。夫は和食をしっかり食べました。
宮崎は一年前に来たばかりなので、観光予定を入れずにジョギングだけしようと思い、10時頃下船しました。
何となく自然と足がシーガイアの方に向き、一葉道路を北上しました。するとこんな黒毛和牛が。宮崎牛「ミヤチク」の鉄板焼きハウスがありました。昨年は宮崎観光ホテルの焼肉「大淀河畔みやちく」までわざわざ遠征したのですが、こんな近くにこんな良いものがあったとは。
10分ちょっとでシーガイアの大きな敷地の端に到着し、そこから更に奥に向かって走りました。この道は走っていても風景があまり変わらず、また遠くに見える建物がいつまでたっても近づいて来ないので、根性が鍛えられます。それにしても昨年必死で走ったこの道を、また走ることが出来るのは幸せなことです。
この後、この道を逸れて「禊池(みそぎいけ)」を見に行きました。何の変哲もない池に見えますが、妻の伊邪那美命(イザナミノミコト)を追って黄泉の国へ行った伊邪那岐命(イザナギノミコト)が、その穢(けがれ)を払うために禊(みそぎ)を行ったとされる由緒正しい池です。そしてこのみそぎを行った時に「天照大神」「月読命」「須佐之男命」が生まれたとされているのです。
池の端にはこのような石碑があり、下の石版には「古来よりこの地は筑紫日向橘小門之阿波岐原と呼ばれ、イザナミノミコトが禊祓されたと伝えられています。 我が国最古の歴史書である古事記には、イザナミノミコトが禊祓をされ、天照大神をはじめ多くの神々が誕生されたと記されています。」と書かれています。そしてこの地「筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原(つくしのひむがのたちばなのおとのあわぎはら)」は、全国の神社で奏上される祝詞(祓詞)の冒頭「掛まくも畏き 伊邪那岐大神(かけまくもかしこき いざなぎのおおかみ)」に続いて出てくるのです。

この後、そのすぐ近くにある江田神社に行きました。イザナミノミコトとイザナギノミコトを祭る歴史の古い神社です。ロケーション的に神社の中の神社と言えるのではないでしょうか。

神社の脇にはみそぎの碑というオブジェがあって、うしろにイザナギノミコト、手前が左からスサノオノミコト(海)、アマテラスノオオミカミ(日)、ツクヨミノミコト(月)を表していると説明文にありました。周りの雰囲気からするとちょっと唐突感があり、微妙な感じでした。
再びシーガイアの方に戻り、阿波岐原森林公園のジョギングコースを走ることにしました。一年前にも走りましたが適度に起伏とカーブのある立派な走路です。

12時過ぎに港に戻り、約15kmのジョギングを終了しました。そのまま新装の本船の姿をチェックしました。デザイナーが藍色に拘ったそうですが順光の後ろ姿はとても綺麗でした。

船に戻って汗をかいたジョギングウェアを洗濯機に仕込みました。出来上がりは3時間後と表示されました。洗濯物がたまらないのが、洗濯機使い放題の日本船のいい所です。
シャワーをしてさっぱりした後は7Fの「リド・テラス」で軽食を取ることにしました。また、UQ-WiMAXによるネット接続にも挑戦したところ、ここ宮崎港ではバッチリ繋がりました。

グリルの本日のメニューには食べてみたかった「黒毛和牛のハンバーガー」はなく、「黒豚ソーセージのホットドッグ」と「ニューヨーク・サンド」だったので、1つずつ注文することにしました。「にっぽん丸」でダイニング以外の場所でこうして軽食が食べられるようになったのは画期的です。

しばらくすると、GODIVAの「ショコ・リキサー」の提供時間になったので、張り切って注文しました。(ショコリキサーの提供時間帯9:30〜11:30、14:00〜18:00、20:0〜22:00)しばらくして番号札のコールがかかりました。
期待通り適度な甘さでとても美味しかったのですが、撮影に気をとられて注意が散漫になり、真っ白いコットンセーターのお腹のへんにいつの間にかチョコをこぼしていました。「ハッ」と気付いて夫に申告すると「アホ〜〜ゥ」。普段食べこぼしの多い夫に言われショック倍増、精神的打撃からしばらく立ち直れませんでした。
一旦部屋に戻って落ち着きましたが、また夫が外に出ようと言うので付き合いました。今日のうちなら下船しても再び本船に戻って来ることが出来ますが、明日下船する時はそれっきりでしばらく乗れないから、と言う理由でした。意外と細やかなことを考えているなと少々見直しました。
スーパーでもあるかと陸の方に向かってしばらく歩きましたが、徒歩圏内には何もなさそうだったので、結局引き返してフェリーターミナルを覗いてみました。
みやげ物屋があったので、宮崎土産を数点仕入れました。客船の旅では、岸壁に地元の観光業界のブースが出店していない限り、船の近くでみやげ物を買うのは難しいのですが、フェリーターミナルのすぐ隣に着岸する宮崎は例外と言えるでしょう。
結局買い物時間を含めて1時間半ほど散策し、16時過ぎに「にっぽん丸」に戻りました。夫は最終帰船時間まで1時間を切ると、急にそわそわして帰船を急ぐのです。
ちょっと寒かったのですが、1杯目のビールはバルコニーで飲むことにしました。左舷付けしているので、たまたま今回右舷の部屋にいる私達からはちょうど海が見えているからです。
と、漁に出るのか漁船が出て行きます。この時期は何が獲れるんだろうねと話している間にどんどんやって来ました。
漁場に一番に着くのは俺様のフネだぜ!とばかりに先を争って(いるように見える)出て行く勇壮な漁船コンボイを見守りました。鳥羽一郎の演歌でカラオケの後ろに流れている映像のようなシーンでした。
それから、カッターの高校生達が、女子生徒の掛け声で回頭訓練を繰り返していました。寒いのに熱心にがんばっているなと感心し、船尾の旗を見ると宮崎県立宮崎海洋高等学校と書いてありました。この学校は半年後に開催された「全国水産・海洋高等学校高等学校カッターレース大会 」(2011年7月)に出場し、準優勝に輝いていたことがわかり嬉しくなりました。
洗濯物の回収を忘れていたので取りに行きがてら、続きは部屋で飲むことにしました。ビールは大体いつもと同じく二人で3本になりました。日没は17時半で、外はじわじわと暗くなりました。
真っ暗になってしまったので、出港シーンを堪能するという感じではありませんが、それでも儀式は儀式とオモテに出かけていきました。
定刻に出港し、後ろに控えていた「おおさかエキスプレス」に別れを告げました。どっぷり暗くなってからの出港は、こちらもフェリーのような気分になります。前方には遠くシーガイアの灯りが見え、また(走りに…)来たいと思いました。
そして本日のハイライト、夕食に行くことにします。このクルーズは関西のグルメ誌「あまから手帖」とのタイアップで、今晩はミシュラン三ツ星の「菊乃井」の懐石料理が楽しめるのです。期待に胸震わせ6F「春日」に行くとほとんど満席でした。

〜にっぽん丸に「菊乃井」の料理人が乗船して、腕を振るいます。〜

何でも菊乃井は「本店」「赤坂店」「木屋町店」でミシュラン3-2-2の合計7つ星獲得とのことで、あまり事前知識がないまま乗った身としてはありがたいことでした。

(先付)隠れ梅 ふくめ梅 白子
(先付)柚子釜豆腐 柚子味噌 あられ柚子

(向付)天然鯛 小しび 土佐醤油
大葉 長芋 梅人参 松葉胡瓜 山葵
(蓋物)百合根饅頭(フォアグラ 鶉ミンチ)
結び青味大根・人参 トリュフあん

(焼物)鰈奉書焼き 胡桃飴煮
(強肴)七宝蒸し
フカヒレ すっぽん 干し貝柱 聖護院蕪
クコの実 松の実 焼白葱 生姜 だいだい

(御飯)蒸し寿司
焼き穴子 錦糸 海苔 菜種
小梅大根・人参・柚子
(吸物) 聖護院蕪のすり流し
桃色麩 せり 七味
(水物)ピスタチオアイス
マンゴースープ あられピスタチオ

料理の途中、菊乃井の主人である村田吉弘氏が挨拶に来て、料理の説明を行いました。右はあまから手帖編集顧問の門上武司氏。彼らの登場に気をとられ、鰈の奉書焼きの料理そのものの写真を撮り忘れてしまいました。三ツ星の店が厨房設備の限られた船内で料理を出すのは大変なことだと思いますが、陸で準備出来るものは極力準備しているとのことでした。2F「瑞穂」も当然同じメニューですが、「春日」ではビールと日本酒がフリードリンクになっていました。
滅多に食べられない懐石料理を堪能し、すっかり満腹だったのですが、隣の席の人のバースデーセレモニーケーキのお相伴にあずかりました。
18時半から20時半までとたっぷり二時間の食事をして、私は寛ぎモードに、そして夫は既に始まったメインショー、上口龍生「和妻への招待」に出かけて行きました。和テイストのマジックだったそうです。
出港から3時間、21時頃の本船の位置です。「にっぽん丸」は九州の最東端、大分県の鶴御崎(つるみさき)を目指し、日向灘を最短距離で航行しているようです。
バルコニーから外に出てみると、南東の空のオリオン座と、天頂付近のプレアデス(昴)が綺麗に見えました。とても寒かったのですが感動の星空でした。

夫のブログ「にっぽん丸・新春瀬戸内海・宮崎クルーズ」(2011年1月10日)