ぱしふぃっくびいなす 秋の屋久島・奄美大島クルーズ乗船記 (2009年9月20日)

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3日目 屋久島(横浜から591マイル) 入港8時 出港18時
朝8時半集合の「屋久島半日観光」ツアーに予約を入れていたので、6時45分に早起きしました。フネは既にかなり屋久島に近づいていたので、着替えて入港の儀(入港ワッチ)に行きました。すると7時半ぐらいにフェリーよろしく「ただいまメインダイニングは満席になりました」と放送が入ったので心置きなく入港シーンを堪能することになりました。
屋久島は直径40km程ですが、九州地方最高峰の宮之浦岳(1,996m)を擁するだけあって、海のそばにすぐ山がある感じの地形に見えます。
宮之浦港の火の上山地区岸壁は狭い客船専用っぽい港で、しずしずと港に入った本船ははそこでタグに押されて反時計まわりに回頭し、右舷出船で入港予定時刻の8時よりちょっと前に着岸しました。
それにしても着岸前からギャングウェイを出しているのは、日本の客船では初めて見ました。何となくフェリーのランプウェイのような感覚なのかもしれません。
朝食は最近の定番である和食を当然の様に注文しました。鯖の塩焼きが美味しかったです。鯖では30年以上前に一度だけ蕁麻疹が出たことがあるのでその発作に怯えつつ、たまに食べてしまいます。
集合時刻の8時半にバスに着くのでは遅すぎると夫が急かすので、しっかり5分前めがけて下船すると、ギャングウェイの所で船長が立っていて、観光に出かけていく乗船客を見送っていました。
ツアー客が揃って、バスが出発する際にも船長がこちらに向かって手を振っているのにはびっくりしました。寄港地で船長に見送られるのは初めての体験でした。
バスは40分程走って町立の屋久杉自然館に行きました。ここでゆっくりと屋久杉とは・・・、という入門編を学ぶことが出来ました。樹齢が1,000年以上にならないと屋久杉と呼ばれず、100年以上は小杉、それより若いものは地杉と呼ばれるのだそうです。
自然館を入ってすぐに展示してあるのが「いのちの枝 」です。有名な「縄文杉」の枝が平成17年暮れの積雪により折れてしまったのを、ここに展示したそうです。枝、とは言え1,000歳で直径は1mもありました。これだけで「縄文杉」の偉大さがわかります。
また、「平木」(屋久杉を50cm×10cmの短冊状に切ったもの)の展示がありましたが、樹脂が多く腐りにくいことから屋根材等として生産されていたもので、年貢としても扱われ、享保13年(1728年頃)に平木2310枚=米1俵の換算だったそうです。それにしても平木に適さない形の悪かった杉が伐採を免れて屋久杉として現在も残っているのは、何が幸いするのかわからないということだと思います。

屋久杉の伐採を通じて経済を潤した泊如竹長さ2m、重さ20kgの巨大チェーンソーエンデバーで宇宙に行った種子のヤクスギ

屋外には切り出された屋久杉の運搬にかつて使われたトロッコが展示してありました。この隣にはディーゼルカーも置いてありました。
屋久杉で一番有名な「縄文杉」はトレッキングで往復10時間もかかるそうで、ツアーは町道沿いにあり観光客が比較的アクセスしやすい「紀元杉」に向かいました。この道中はなかなか凄まじく、途中からは完全に片面通行になってしまったので、運転に自信がないとちょっと厳しそうです。
バスは1時間近く走り、幹の周囲16m、推定樹齢3,000年の紀元杉と対面しました。着生と言って、いろいろな植物がそこから芽を生やして勝手に育っているのを見ると、屋久杉はまさしく木々の王、だという感じがしました。

どれが何やらわかりませんが、ヤマグルマ、ヤクシマシャクナゲ、ユズリハ、ナナカマドなど10種類以上が着生しているようです。
根元から見上げると大迫力根元自体も大迫力こちら側は着生植物ばかり

帰りのバスでは幸運なことにヤクシカとヤクザルを見ることが出来ました。それぞれニホンジカとニホンザルの亜種で、この島の固有種です。

バスは最後に屋久島観光センターに寄り、買い物タイムがありました。屋久島の自然に触れ、感動して屋久杉グッズを買おうかとも思いましたが、家に戻れば置き場所に困るだろうと思い留まりました。

ほんの半日のツアーでしたが、海岸線の亜熱帯気候から、上の方は旭川と同じ平均気温で雪も積もるということで、植物学者にはとても興味深いであろう島だと思いました。
13時頃フネに戻って、すぐジョギングでまた下船することにしました。ツアーの時バスから「上屋久町総合グラウンド」というのが目につき、案内板に陸上競技場があると図示してあったので、そこまで1km程走ることにしました。想像以上に立派な400mのトラックがあったので、そこで真剣に走り込みました。
なお、トラックでは年配の人達がグラウンドゴルフの競技中でした。また、グラウンドの周辺では聞いたことのない鳴き声のセミが盛んに鳴いていましたが、戻って調べたところ「クロイワツクツク」という鹿児島と沖縄にしかいない南方系のセミだったようです。

ジョギングの良いところは、気軽に本船の全容を眺められる場所まで走って行けることでもあります。トラックからの帰り道煩雑に立ち止まって本船を撮影しました。


日課であるジョギングを済ませると、あとはシャワーでさっぱりしてビアタイムに流れ込めます。気温は30度ぐらいあったので、しっかり汗をかいて戻って来ました。

「新日本海フェリー(ゆうかり)との類似点そのE」は前から見た顔の感じと、わき腹のラインがそっくりです。

左が本船「ぱしふぃっ くびいなす」
右が新日本海フェリー「ゆうかり」
スイートルームと展望浴室部分の造りはほとんど同じです。「新日本海フェリー(ゆうかり)との類似点そのF」

左が本船「ぱしふぃっ くびいなす」
右が新日本海フェリー「ゆうかり」
調度品は違うのですが、雰囲気がそっくりな「新日本海フェリー(ゆうかり)との類似点そのG」

左が本船「ぱしふぃっ くびいなす」のオープンバー「ウィンド・オブ・メコン」
右が新日本海フェリー「ゆうかり」の「カフェ・ハイランド」

戻って大浴場のオープンする15時を待ちかねて一番風呂に入りました。同じことを考えた人たちが数人いたようで、同時に飛び込みました。そして戻って本船での2度目の洗濯をしつつ、ビアタイムになりました。走った後水分を我慢していたので、スポーツドリンク状態でビールを飲んでしまいました。

ちなみに本船の洗濯機や乾燥機は残り時間が表示されるので、詰め替えや回収作業が簡単です。それからこのフロアのステートルームA用のランドリーは洗濯機と乾燥機が各1台だったので、混雑するのかもと思いましたが今のところは占有状態でした。
出港予定の10分程前、今日はメインマストに近い所まで上ってみたいと11Fオブザベーションラウンジ「グランシャリオ」に行くと、そこから外に出られることがわかりました。
するとそのすぐ下にブリッジがあり、船長がマイクですべての指示を与えているところを間近に見ることがとても面白かったです。オモテやトモのクルーからの声が、フェリーよろしくスピーカーから響いているのが印象的でした。
しずしずと防波堤をかわし、本船は暮れゆく屋久島を後にしました。このあと食事が遅番の組は18時15分から7Fメインラウンジ「ル・パシフィーク」で「徳原大和 奄美島唄コンサート」がありました。奄美の加計呂麻島で生まれ育ったそうで、純朴な感じの青年でした。
ショーは19時までで、食事までまだちょっとあることから何気なく8Fのデッキに出てみると満天の星が。本船の進行方向から船尾に向かって天の川が綺麗に見えました。夏の大三角形(こと座のベガ、わし座のアルタイルとはくちょう座のデネブ)とカシオペア座を確認することが出来ました。

つぶ貝となめ茸の山葵和え秋刀魚のたたき造り南瓜と蕪の吉野仕立て
豚肉と生若布の豆乳しゃぶしゃぶ
きびなごの天ぷら
ご飯、吸い物、香の物水菓子(梨、無花果)

食事は和食で、しゃぶしゃぶが美味でした。相席になったご夫妻と、会話が弾んで楽しかったです。

食後、今度は10Fスポーツデッキに出て再度満天の星を楽しみました。
フネは順調に奄美大島を目指しているようです。皆既日食の時一躍スポットを浴びた「トカラ列島」の東海上を南下しているところでした。