おれんじ8 ワンナイトクルーズ乗船記(2008年2月16日〜2月17日)

大阪南港13時発
 ⇒新居浜港20時10分着 20時40分発⇒東予港21時40分着 22時30分発
大阪南港翌朝5時50分着

航空会社のマイレージが暮れに期限切れなってしまうため、週末か三連休で企画をすることにしたところ、四国開発フェリーの「ワンナイトクルーズ」案が浮上しました。これは大阪南港から新居浜、東予に行き、そのまま同じフネで引き返して大阪に戻ってくる一泊二日のクルーズです。ほとんどのフェリーが夜間に航行する中、日中の時間帯に明石海峡大橋と備讃瀬戸大橋をくぐるのと、定期船であるフェリーを利用するため毎日運行されているのが特徴です。

2月の三連休は残念ながら予約が取れなかったのですが、翌週の土曜日は2室しかない特別室がまだ空いていたので、晴れて企画が成立したのでした。料金は2等寝台の場合1名12,000円ですが、特別室はこれに18,000円を追加する必要があって30,000円です。クルーズプランを利用せず、運賃だけの往復の場合は復路が3割引になるので同じ部屋は25,500円ですが、三食付きと考えるとリーズナブルと言えるでしょう。

南港へは伊丹より関西国際空港の方が便利そうだったので、羽田から朝9時5分発の関空行きに搭乗しました。客船だと丸1日かかる距離も飛行機はあっと言う間です。降下を始めてから使用滑走路が変更になったとかで、関空を越して思い切り淡路島上空まで行ってから旋回して戻って来たのですが、明石海峡大橋や神戸のポートタワー、南港のフェリーターミナルが良く見えました。1994年に開港した関空ですが、私は初利用でした。
関空から南港までどうやって行くのか夫が全く調べていなかったため焦りましたが、空港の案内所で教えてくれました。11時10分発ユニバーサルスタジオ・ジャパン行きのリムジンバスで「ポートタウン東」まで30分ちょっと1,300円、そこからニュートラムで1駅200円でした。バスは日野セレガ、V8エンジンで、バス好きでもある夫は早くも興奮気味です。

12時過ぎに到着したフェリーターミナルは名門大洋フェリーの北九州行きやさんふらわあの大分・別府行き、それからオレンジフェリーの基地となっており、東京では見られないフェリーの揃い踏みです。ワクワクしながらカウンターで乗船手続きをしました。客船は優美で綺麗ですが、フェリーは働くフネならではの武骨な感じの機能美があります。

12時20分過ぎに乗船可能となったので、乗船口に向かいます。おれんじ8は1999年出来で全長156m、幅25.6mの堂々たる姿です。右側に名門大洋フェリーの新門司行き「フェリーふくおか2」、左側に関西汽船の別府行き「さんふらわあ あいぼり」が接岸しています。

桟橋を移動し、船尾側の乗船口から「おれんじ8」に乗り込みました。乗っていきなりエスカレーターがあってビックリでした。エスカレーターを上り切ると3甲板で、受付とレストランがありました。ここから2階分吹き抜けとなった空間に階段があり、広々としていました。

案内所でクルーズのスケジュールの簡単な説明がありました。ワンナイトクルーズは、大阪13時発の下り2便と東予22時40分発の上り3便を連続乗船する企画モノで、昼・夜・朝の3食とブリッジ見学がセットになっています。このプランの参加者は、私達ともう1組だけのようでした。
鍵を渡され4甲板の広い廊下を通ってオモテの方に行くと、一番端の部屋が私達の特別室121でした。本船は一番上のこのグレードの部屋だけがトイレとバスを備えています。バスは大浴場があるのでなくても困りませんが、トイレはやはり部屋にあった方がいいと思います。窓は大きくて明るく気持ちがいい部屋です。

ドアを入って突き当たりがバス大きい窓と広々とした部屋バスとトイレ

荷物を置くと早速レストランに行き、出港までに食事を済ませることにしました。入口付近はカフェテリア方式となっていますが、一番奥がレストランスペースになっています。昼食は7種類の中からの選択方式でした。唐揚げ、エビフライ、オムカレー、カツカレー、カツ丼等の高カロリー食は出来るだけ避け、夫はラーメン、私は天ぷらうどんを選択しました。ドリンクは一口ビール、コーヒー、オレンジジュースから選ぶことが出来ます。

注文後、番号札を受け取り、用意が出来たら呼ばれるので取りに行きました。ラーメンは瀬戸内風と言うか魚のダシがきいており、天ぷらの海老は甘くてプリプリでした。

急いで食べたのですが、食べ終わって5甲板のデッキに出ると本船は後進で離岸し、バウスラスターで向きを変えている所でした。写真の左「フェリーふくおか2」と右「さんふらわあ あいぼり」の間から出て来ました。「ふくおか2」の向こうには「フェリーきたきゅうしゅう」が見えました。
完全に向きを変え、かもめフェリーターミナルを通り過ぎます。宮崎カーフェリーの「みやざきエクスプレス」が19時の出港を待っています。25ノットで走る高速船です。
並んでダイヤモンドフェリーの鹿児島県志布志行き「さんふらわあ さつま」が停泊しています。こちらは18時の出港で、瀬戸内を通らず高知沖を回ります。
沖には同じダイヤモンドフェリーの「さんふらわあ こがね」が投錨していました。こちらは配船表によると20時30分発大分行きの寄港便になりますが、ターミナルに接岸している18時50分発の別府直行便「さんふらわあ あいぼり」が離岸するまで待っているのでしょうか。
防波堤を抜けて本船は速度を上げました。デッキには猛烈な風が通る様になり、流石に2月のこの時期には厳しいものがあります。そろそろブリッジ見学の時間なので、案内所前に下りて行きました。

係の方に注意事項の説明を受け、私達を含む4名が5甲板のブリッジに案内されました。クォーターマスター(操舵手)が舵を取り、船長が双眼鏡を手に自ら指揮していました。オフィサー(航海士)の方が可変ピッチプロペラの事や、機器の説明をしてくれましたが、残念ながら10分は短か過ぎでした。

先程までは自由に外に出られたのですが、強風のため原則出入禁止となってしまいました。折角の特別室とは言え部屋にいるのもつまらないので、5甲板の展望ラウンジで行き交う船や、須磨や舞子の海岸線を眺めることにしました。
14時頃、神戸が見えました。横浜と違いすぐ後ろが山、六甲山です。その約15分後、いよいよ明石海峡大橋を通過します。全長3,991m、中央支間1,991mで世界最長の吊橋です。主塔の高さは290.3mで国内では東京タワー333mに次ぐ高さだそうです。

みるみるうちに橋が近づき、あっと言う間にくぐってしまいました。真ん中の写真は遠ざかる橋、一番右は望遠で撮影した後ろからついてくる商船群です。この主塔の間が航路なので最初はバラけていた船もほぼ一列になる感じで、壮観でした。

橋を越えて数分後、明石の天文台が見えました(真ん中にある塔)。これが日本の標準時の東経135度にあります。これが標準だとすると、関東以北はかなり朝早いうちから起こされ、夜は早く暗くなっていることになります。

この後もしばらく展望ラウンジで両側の風景や、航路筋のフネを楽しみました。部屋に戻っても拘って予約した左舷側は同行船も反行船も良く見えます。

先月乗船した飛鳥Uの「ビスタラウンジ」風展望ラウンジフェリーは20ノット以上で走るのでほとんどの貨物船を追い越します小豆島は右舷側に見て16時半頃通過。いたる所にフネがいます

商船三井フェリーの「さんふらわあ とうきょう」。金曜夜に博多を出て岩国を経由し月曜朝東京に着きます。四国フェリーの「第八十一玉高丸」。
宇野−高松間18kmを1時間で結んでいます。
僚船おれんじ7とは17時半前に行き交いました。アナウンス等の案内はありませんでした。
船舶ワッチの合間に大浴場に行き、備讃瀬戸大橋をくぐる前にお待ちかねのビアタイムです。500ml缶が400円とかなり良心的。

17時40分頃から瀬戸大橋がぐんぐん近づいて来ました。西に向かう船は備讃瀬戸北航路を通るので、本船は北備讃瀬戸大橋の下をくぐることになります。
南備讃瀬戸大橋岩黒島橋と櫃石島橋

瀬戸大橋は大きく6つの橋で構成されており、左側四国側から南備讃瀬戸大橋(吊り橋)、北備讃瀬戸大橋(吊り橋)、与島橋(トラス橋)、岩黒島橋(斜張橋)、櫃石島橋(斜張橋)、下津井瀬戸大橋(吊り橋)となります。これらを結ぶ高架橋を合わせると全長13kmにもなり、鉄道と道路の併用橋としては世界最長です。

北備讃瀬戸大橋与島橋(通過後)下津井瀬戸大橋

定刻の17時45分頃、橋をくぐりました。しばらく余韻にひたりたい所ですが、クルージングディナーの開始時刻が17時50分と定められていたため、残念でしたが展望ラウンジを後にしました。左写真のまん中の土台が北備讃瀬戸大橋と南備讃瀬戸大橋の境目です。

下の写真はレストラン後方の扉から出て激写した3枚を合成してみました。橋のスパンの大きさがわかります。


ディナーは乗船の予約時に、洋食か和食を選択しますが私達は洋食にしました。飲み物はビールかワインかオレンジジュースが1杯付いています。まずはオードブルとコーンポタージュを。お皿がオレンジフェリーのロゴ入りでお洒落です。

車海老のバターソテー和牛ステーキデザートとコーヒー

普段コースの魚料理の部分は肉料理の1つ前、ぐらいにしか思っていないのですが、この車海老は甘くて絶品、もう2〜3匹載っかっていればいいのに、と思いました。ステーキはもちろん満足でした。食後は部屋のすぐ先にある、特等客専用のラウンジを覗きましたが誰もいませんでした。ちなみにこの感じは今治のクラブみたいだ、とは夫の感想です。
新居浜港には定刻より10分早く20時に着岸。食後部屋のテレビを見ている途中から夫は爆睡していたので、一人カメラを持って接岸シーンを見ていました。船尾のランプウェイと右舷側を接岸するのですが、無線でブリッジとやり取りをしているのが「あと5m」から「あと20cm」単位まで小さくなっていくのは驚きでした。
東予港には21時50分の定刻に到着しました。毎日同じ作業をしているとは言え、フェリーは狭い所にピタリと無駄なく着岸するのには感心します。しかしこの時期この時刻の着岸ワッチは寒くて辛いものがありました。

なお、おれんじ8は新居浜と東予からの乗船客のために乗船時刻から約30分だけレストラン営業をしています。
エンジンの音が何故か船体に共鳴し、周期的に低い唸り音が部屋にも響いていたのが寝る時にちょっと気になりましたが、 翌朝はあと30分で大阪南港に到着する、という5時半頃のアナウンスで叩き起こされました。「眠いのにぃ〜」と一瞬ムッとしますがこれはそもそも働く船なのですから仕方ありません。でも本船のいい所は6時に到着後も8時までは在船出来ることで、レストランもそれまで朝食バイキングの営業をしています。サラダ、ヨーグルト、ソーセージ類の他、瀬戸内航路の雰囲気溢れる「釜揚げちりめん」や「じゃこ天」「焼きかまぼこ」等がありました。大浴場と朝食バイキング時の和洋折衷ラインアップは日本船の醍醐味と言えるでしょう。
ディナーもそうでしたが、朝食用の取り皿もオレンジフェリーのロゴ入りでお洒落でした。ディナー用の大皿は3,500円、小皿は2,600円、カップ&ソーサーは2,800円、そしてこの朝食用は2,200円で船内販売されています。朝食用はかなり心惹かれましたが、持って帰るのも重いので迷った末に断念しました。

食後はギリギリまで船で粘った後、下船しました。下船口の所から車両甲板を覗きましたがほとんどの車両は降りた後でした。それにしても流石の広さです。
下船してフェリーターミナルまで歩いていると、新門司を前の晩20時に出港した「フェリーきょうと2」がやって来ました。その横には先着した「フェリーおおさか」が見えています。
今度は「おれんじ8」の船首付近に回りこんで撮影していると、その横にいた「さんふらわあ こばると」がするすると出て行きます。見た時はてっきり目的地に向かって出港したと思ったのですが、これは前の晩19時に別府を出て6時半に南港に到着した船で、配船表だと同じ日の18時50分発の別府行きになっていたので、どこか沖で待つために出たのか、給油は別の場所?なのでしょうか。
ある程度沖にでると、そのまま時計回りに向きを変えてどこか別の場所に行くようでした。さんふらわあのシンボルマーク、太陽が朝日に輝いてとても綺麗です。
今度はさんふらわあが出た後の桟橋に回りこみ、「おれんじ8」の全容を撮影しました。シンボルマークがなかなかイイ感じです。
最後に「おれんじ8」「フェリーきょうと2」「フェリーおおさか」が並んだ姿を撮影しました。瀬戸内から明石海峡を通ってまっすぐ突き当たると大阪南港ということで、九州や四国から大阪に夜のうちに移動出来るフェリーは、特別な乗り物ではなく、地域に根ざした交通手段であることを実感した旅でした。

それにしても一体何バイのフネを見たのでしょう、大型船好きには堪えられない瀬戸内海航路だったので、次回は是非クルーズの客船でゆったり通ってみたいと思いました。【2008年3月記】